健康志向の英シリアルブランド、政府による規制が追い風に

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英政府は2021年夏、不健康な食べ物や飲み物のCMを規制すると発表した。2022年10月に施行されるこの規制をきっかけに勢いづいているのが、砂糖が控え目で栄養価の高い朝食用シリアルを独自開発して販売する一連の新ブランドだ。

なかでも「クリスピー・ファンタジー(Crispy Fantasy)」は、一般消費者たちに向けて、自社製品は初の「junk-free, hassle-free(ジャンクでなく手間いらず)」な朝食用シリアルだとアピールしている。起業家のラファエル・ナウム(Raphael Nahoum)とアンドレア・ロドリック(Andrea Rodrik)が誕生させたシリアルブランドで、直販ならびにアマゾンUKで新発売された。

第一弾はチョコレート味で、無糖ココアパウダーを使用しており、1食あたり8gの植物由来たんぱく質が摂取できる。砂糖含有量は、既存の有名ブランドの市販商品と比べると50%以上も少ない。

同社によれば、「英国には実に巨大な市場機会がある」という。朝食用シリアルとオートミールの消費量が増加傾向にあるためだ。そうした状況は、より成熟した米国市場を反映している。米国ではこのところ、Magic SpoonやKreatures of Habit、Yishiといったブランドが誕生し、こうした流れをけん引している。

統計サイトのスタティスタによると、英国の朝食用シリアル市場は29億ドルの規模と推定され、売上と消費量がともにここ数年、上向いている。とはいえ、英国政府が、脂肪分や塩分、糖分の高いものを中心に「不健康な食品」に対する規制を強化しているなかで、朝食用シリアルの大手ブランドへの風当たりは強まる一方だ。

10月に施行される新たな規制には、不健康な食品について、21時前のテレビCM放送禁止や、食料品店での陳列の制限などが含まれている。こうした措置は、子どもの肥満や、糖分の過剰摂取による疾患に直接働きかけるものだと、英保健・公的介護省は過去に強調していた。しかし、この規制案が2021年に作成されて以降、老舗ブランドのケロッグなどからは批判の声が上がっている。

「ライス・クリスピー」などを販売するケロッグは、新たな規制は根拠を欠くと主張し、政府に対して裁判を起こすと発表した。同社は、シリアルとともに摂取する牛乳やヨーグルトなどの栄養素も考慮すべきだとも主張している。シリアルそのものだけが食されることはめったにないからだ。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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