家庭に眠るエコバッグをシェア。パタゴニアの新たな挑戦

パタゴニア 東京・丸の内ストア


取材後記


使い捨てのレジ袋がどの程度二酸化炭素を排出し、マイバッグを利用するとどれだけ抑制されるのか、それらの原材料や製造工程、使用回数などを含むライフサイクルアセスメントの観点からCO2排出量を算出した調査報告(*)が出ている。

そこでは、耐久性の高いマイバッグなら環境負荷低減に貢献するが、頻繁に交換が必要なものはレジ袋よりも環境負荷が大きくなる場合があることが示されている。また、耐久性の高いバッグであっても使用されていなければ、その原材料生産や製造、輸送工程から発生した環境負荷は、使い捨てレジ袋から生まれる環境負荷を抑制することにはならない。

エコバッグがエコにならない可能性という課題がある中、パタゴニアでは、バッグそのものを新たに生み出さないという視点を持つ。顧客の家庭に眠っているエコバッグを提供してもらうことにより、既存の資源を循環させて活用し、直接会うことのない顧客どうしが提供されたエコバッグを通じてつながる共助の仕組みが築かれている。

サステナビリティ分野においてパタゴニアは先進的な企業の代表と言えるが、店舗を中心とした循環性向上の取り組みについてお話を伺ってみると、トライ&エラーを繰り返してきたことがわかる。こうした方がよいのでは?という案があれば試し、期待値ほどの成果が出なければ他の案を試す、フットワークの軽さが着実に改善を前進させる。

また、改善案が現場(ストア)から出されるという点も、お客様の声や現場でのオペレーションをよく把握した上での実現可能な提案になることが理解できる。

満点を狙わず、できることから試しうまくいかなければ軌道修正する。パタゴニアのような先進企業だからできる、ということでは決してなさそうである。

(*) LCAを考える 「ライフサイクルアセスメント」考え方と分析事例 (プラスチック循環利用協会)より

【参考記事】エコバッグ・シェアリング


※この記事は、2022年5月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。

文=和田麻美子

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