家庭に眠るエコバッグをシェア。パタゴニアの新たな挑戦

パタゴニア 東京・丸の内ストア


エコバッグ・シェアリングが目指す未来


来店されるお客様にマイバッグの持参を呼び掛けていますが、持参率を100%にする、といった数字の追求はしていません。顔を合わせることのないお客様どうしがパタゴニア直営店を介してサポートし合う共助の仕組みの構築を通じて、お客様のマインドチェンジや消費行動の変化につながることが成果であると考えています。そして、この仕組みがうまくいって他の企業さんもお手本としてくれたら嬉しく思います。

現在、パタゴニアの店舗では97.3%のお客様がマイバッグを使用して購入した製品をお持ち帰りされますが、この数字を100%にすることを目指すのではなく、お客様と共に、問題の根本原因となっている既成概念を再考し、インパクトを拡げることを目指しています。

お持ち帰り袋の「廃止」まで踏み切った理由のひとつは、当たり前に配られ無意識に受け取ってきたレジ袋を通じて、現代の多くの環境・社会問題の根本の原因になっている“take-make-consume and dispose(取って、作って、消費して捨てる)”というリニア・エコノミー(直線型経済)へ疑問を投げかけることでした。

そして、お持ち帰り袋のような課題を解決するだけでなく、私たちが目指すストーリーを伝えていくことを今後も大切にしていきたいと考えています。お持ち帰り袋ひとつとっても様々な試行錯誤を繰り返してきましたが、常に中長期的な未来を見据えて、新しい試み、ときには苦労も含めて楽しむ文化があることは当社の特徴です。エコバッグ・シェアリングは私たちにとって、ワクワクするチャレンジのひとつです。

店舗における循環性向上の取り組み


なお、お持ち帰り袋以外の店舗における取り組みについても以下お話いただいた。

パタゴニアでは、お持ち帰り袋以外にも、店舗における循環性向上に取り組んできました。

製品を長く使っていただくための取り組みとして、シェルに穴が開いた、バッグの持ち手が取れた、などという場合に、店舗やリペアセンターで修理を行っています。小規模な修理はどこの店舗でも対応しており、大がかりな修理が必要な場合は、製品をお預かりして対応します。

製品が寿命を迎え、お客様が手放すタイミングが来た時は、使用済み製品を店舗に設置した回収ボックスにお持ちいただいて回収しており、それらは国内でリサイクルを行う際の原料となります。自社製品を焼却・埋め立てなどの廃棄処分にしたくないという想いから、衣類のみでなくすべての製品を回収対象としています。

梱包された商品を納品する際に使用する箱は、以前は段ボールだったものを再利用可能な折り畳み式コンテナに変更したため、箱の廃棄もなくなりました。東京都内にある8店舗に商品を納品する際は、ミルクラン方式と呼ばれる各店舗を巡回する集荷方法を採用し、配送効率の向上、CO2の排出削減につなげています。

このような製品の配送における改善の取り組みについては、実際に製品を取り扱うストアスタッフから改善の提案が出されることが多く、提案に基づいて特定地域で実証実験を行い、その結果を見てから全店舗に展開することが多いのです。

【取材店舗】パタゴニア 東京・丸の内ストア
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文=和田麻美子

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