家庭に眠るエコバッグをシェア。パタゴニアの新たな挑戦

パタゴニア 東京・丸の内ストア


当初は、他社も含んだ使用済みの袋をお客様からご提供いただいたり、スタッフが集めたりして、それらを返却不要で提供していました。その後、お米の残渣をアップサイクルして作った生分解性の袋を提供していた時期もありますが、生地の性質上強度に難があり、重たい製品をお持ち帰りいただくのに耐えられないという弱点がありました。

また、低密度ポリエチレンをリサイクルしたプラスチック製バッグをデポジット制で提供し、袋の返却時に100円をお返しするという仕組みを導入していた時期もあります。お米の残渣の袋よりも強度が増し、パタゴニアのロゴが入ったデザイン面でも良いものでしたが、返却率は10%程度という低い数字でした。100円で袋を買ったという感覚でご利用になる方が多かったのかもしれません。

エコバッグ・シェアリングとは


このように様々な試行錯誤を繰り返した結果、来店されるお客様のうち83%はマイバッグを持参してくださるようになりました。2020年8月に店舗における袋の提供を終了し、ご来店されるお客様にはマイバッグを持参いただくよう呼び掛けています。ただし、それでも袋の持参率は100%にはならないものと考え、持参されていない時に利用いただける、「エコバッグ・シェアリング」という取り組みを始めました。

この取り組みは、各家庭で使用されずに眠っているエコバッグ(他社製も含む)をお客様から提供いただき、他のお客様に循環・共有する仕組みです。A4サイズ以上で、畳んでコンパクトになるものを対象としており、提供時と使用後に返却いただく際には洗って持ってきてもらう、ということをお願いしています。

ストアでは、マイバッグをお持ちでなければこの仕組みが利用できることを丁寧に説明し、返却についてもお伝えしています。お客様の中には、返却される際に、提供できる袋を追加で2-3枚お持ちくださる方もいらっしゃいますし、丸の内ストアは遠方からのお客様も多いのですが、わざわざ返却のためにお店に寄ってくださる方もいらっしゃいます。

これまでのところ、秋冬時期には1週間に1-2枚の利用があり、夏季はマイバッグを持参されるお客様が多いという傾向にあります。また、提供から1年以内の返却率は23%という実績です。

新しい取り組みを始める際には、社内での理解や共有が大切


エコバッグ・シェアリングをお客様にご理解いただくには、ストアでお客様と直接対面するスタッフの案内が重要となります。全社あげての取り組みですが、個々のスタッフにその意図を理解してもらい、自分の言葉でお客様に接客できるようにするため、各店舗のストアマネージャーが責任を持ってスタッフと理解を共有することを大切にしています。

この仕組みに納得されないお客様がいらっしゃった場合、どのように説明すれば納得していただけただろうか、といった点をスタッフ間で協議します。この取り組みについては全社研修のようなことは実施しておらず、業務改善のプロセスづくりなどは、各ストアでのマネジメントに任されています。
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文=和田麻美子

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