ロシア軍が殺害したウクライナの著名な半導体物理学者の偉業

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ウクライナ国立科学アカデミー(NASU)は3月中旬、ウクライナでの戦争による民間人の犠牲者の中に、著名な物理学者が含まれていたことを報告した。

物理学者のバシル・ペトロビーチ・クラドコ(Vasyl Petrovych Kladko)は、マイクロチップなどの半導体の欠陥を、高解像度のX線回折で発見する研究で有名な人物だった。

マイクロチップをはじめとする超小型の電子部品を製造するメーカーは、半導体の内部の結晶の物理的・化学的特性を1ミクロン以下の極小スケールで制御する必要があり、クラドコはX線回折を用いることで、結晶材料の非常に小さく薄い層を詳細に見る方法を考案した。

彼の研究は、マイクロチップの需要が高まる中で、特に重要なものだった。クラドコは2004年以来、NASUの半導体素材の構造解析部門を率いていた。また、V.E.ラシュカリョフ半導体物理研究所の副所長を務め、国内外の物理学ジャーナルの編集に関わっていた。

クラドコが亡くなったのは、3月13日、ロシア軍がウクライナの首都キーウの郊外のイルピンに侵入し、民間人に発砲した時のことだったとされている。詳細は不明だが、クラドコはその直前まで、妻と孫を包囲された都市から避難させようとしていたという。彼は65歳だった。

ソ連は、クラドコが博士号を取得した1986年に、彼に「ソ連の発明家」の称号を与えていた。2007年にクラドコは、ウクライナの科学技術分野の国家賞を受賞し、その後も複数の主要な賞を受賞していた。

NASUは、「彼の死により、ウクライナと世界の科学コミュニティは、固体物理学における重要な人物を失った」と声明で述べた。

編集=上田裕資

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