ビジネス

2022.04.14 16:30

いま、社長が最も口にする言葉とは? ビジネスにおけるバズワード

「発言一貫度ランキング」の調査で、特定の言葉がよく使われていたことがわかった。このランキングは、AI企業「サステナブル・ラボ」が、統合報告書、サステナビリティレポートなど開示資料から「トップメッセージ」の直近5年における「発言の一貫度」を、自然言語処理モデルを活用しスコアリングしたものだ。

そこから見えてくるのは、この時代の経営課題がマクロ視点であるということだ──。


発言一貫度ランキング」TOP20社の経営者たちが過去5年間、ブレずに言い続けた言葉から何が見えてくるか。言葉の頻出度合いを測定してみた結果、上位の10ワードと注目の7つの言葉が浮かび上がった。

一見、ふつうの一般用語の羅列のようだが、最多ワードだった「社会課題」を紐解き、これがどう「有言実行」につながっていったかを見ていくと興味深い。

社会課題を解決するうえでキーワードになったのが「ステークホルダー」である。もともとランクインしている東海旅客鉄道、京王電鉄、鹿島、清水建設、中部電力などインフラ系は、地域住民との関係を緻密にしなければならない産業だった。そこに人口減少という社会課題があり、イオンは「顧客と地域発展」の2語にビジョンを集約。「実店舗の役割×ネットスーパー」といった小売業が持つ社会的価値を実行に移している。

脱炭素への取り組みもステークホルダーを重視する要因となっている。原料調達から物流までバリューチェーン全体でリスクを見える化する活動をしているからだ。

もう一つの要因が「コロナ禍」である。「当たり前」の日常を支えてきたサプライチェーンやエッセンシャルワーカー、そして従業員の存在が重視されるようになった。そもそも課題解決を実行するのは社員である。社員への向き合い方が変化していることを表すのが「感情ワード」だ。「使命」「社員」「一人ひとり」「想い」。本来ならこれらも当たり前の言葉だが、厳しい時代がゆえに有言実行の経営者たちが社員との一体化を強調し、協働を訴えたのだろう。

では、「世界」「長期」「環境」など大きな言葉を使いながら、有言実行の経営者たちはどうやって組織や従業員を動かしたのだろうか。

1位のユニ・チャームの高原豪久は本誌にこう話している。

「社長の私が言ったことに、『よくわかりました』『刺さりました』という反応だと、本当の共感ではありません。共感とは一体化。『自分も社長と同じ意見だな』と一人称で思えたら共感です。その先の行動につなげてもらうために、“共振”の言葉を言い続けるのです」

共振が起こるまで、高原は積極的に働きかけ続けるという。抽象的な言葉を使いながらも、なぜこの20社は有言実行が達成できたのか。その答えは高原が言うように、「何度でも言い続ける」こと。そして、社員に言い続けられるだけのコミュニケーション力をもっているかが重要なのかもしれない。
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文=本田賢一郎、フォーブス ジャパン編集部 解析=サステナブル・ラボ

この記事は 「Forbes JAPAN No.089 2022年1月号(2021/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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