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2022.04.18

日本の大企業とスタートアップが協業で成功するには

INNOVATION ARCHITECT

世界経済のエンジンとなった米カリフォルニア州のテクノロジー企業集積地、通称「シリコンバレー」。その成功により、産学官が連携したハブが世界的に注目を浴び、各国・各都市がそのモデルを模倣しようとしている。グローバルな世界と連携する東京を中心とした「スタートアップ・エコシステム(生態系)」は育成できるのだろうか。早稲田大学ビジネススクール(WBS)の牧兼充 准教授が、エコシステムを形成する関係者へのインタビューを通じてその課題と可能性を探る。

日本のベンチャー投資業界で黎明期から活躍してきた「Sozo Ventures」が振り返る「日本のベンチャー投資業界」の過去、現在、未来。同社は、Twitter(ツイッター)やSquare(スクエア、現ブロック)、Palantir Technologies(パランティア・テクノロジーズ)といった日米のスタートアップに出資する一方で、スタートアップと大企業間の協業や提携を実現してきた。

今回は、同社共同創業者兼マネージング・ダイレクターのPhil Wickham(フィル・ウィックハム)と中村幸一郎、同社マネージング・ダイレクターの松田弘貴の3人が、「日本の大企業がスタートアップとの協業で成功する秘訣」について語った。


牧 兼充(以下、牧):スタートアップ・エコシステム(生態系)の中では、スタートアップやベンチャー・キャピタルだけではなく、大企業や中小企業も重要な役割を果たしています。日本の大企業は、スタートアップとの協業という点で課題を抱えてきましたが、SOMPOホールディングス(以下、SOMPO)とパランティア・テクノロジーズ(以下、パランティア)との提携に見られるように、近年は変化が見えてきました。この点についてはどうお考えですか。

フィル・ウィックハム(以下、ウィックハム):日本の大企業にはいくつか興味深い点があります。まず、市場規模や地政学的な観点から、イスラエルと同じように海外輸出が不可欠だったという点です。そのため、他国と比べてグローバルな観点からも戦略的な観点からもビジネス手法が洗練されています。

一方で、国内の雇用を守るという考えに拘泥するあまり、終身雇用といった社会システムが硬直化し、世代交代や競争の点では他国に後れをとっている点は否めません。ただ、日本企業はもともと戦略的思考を持ち合わせていますし、競争で遅れ始めているという危機感が生まれているので、ここにきてイノベーションの土壌ができつつあるのではないでしょうか。

少なくとも10年前の日本の大企業では考えられませんでした。企業文化の面でもイノベーションへの理解はほとんどなく、スタートアップと提携する大企業などはほぼ皆無でした。それが今では多くの大企業が非常にオープンになっており、領域によってはどれだけイノベーティブになれるか、という競争すら生まれているきらいがあります。日本国内のまだ無名のスタートアップでも、有望であれば組みたいと考える大企業も出てきています。

そして、経済規模も重要です。国内市場が巨大なので、スタートアップにとっては顧客が尽きません。東京や大阪、名古屋といった大都市圏であれば、地下鉄に複数の路線があって簡単に潜在顧客に営業に行けるわけです。こんな国は他にはありません。
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インタビュー=牧 兼充 写真=能仁広之

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