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2022.04.18 08:00

日本の大企業とスタートアップが協業で成功するには

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それに、ビジネスは今まで以上に複雑になっています。「デモ・デイ(試作品の発表会)」で行われるような短時間のプレゼンテーションで企業のバリュー・プロポジションを知ることなど絶対にできません。
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ほかにも、伝統的な金融機関の投資家にはよく、「どうして出資する前に起業家を助けるのか。時間のムダだし、うまいこと利用されておしまいだ」と言われました。

おそらく、ベンチャー・キャピタリストのイメージというのは、優れたスタートアップを魔法のように見つけて出資し、そこで初めて資本や人材といったリソースのアロケーションを手伝う、という存在なのでしょう。これは完全なる誤りです。私たちは、出資する前に何ができるかを起業家に見せることで、投資機会を得られるよう努めているのです。

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パランティア・テクノロジーズを率いる共同創業者兼CEOのアレックス・カープ/Getty Images
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ウィックハム:ベンチャー・キャピタルから起業家に「パワー」が移ったことで、ベンチャー・キャピタルは戦略的に動く必要に迫られています。じつは海外企業への出資それ自体は、割と昔からありました。私が1995年に加わったワン・リバティではすでに10年上もオランダの会社に出資していました。数年後にはJAFCOでも同じことを始めています。

この10年で大きく変わったのが技術的な面によるのも確かです。昔はマイクロソフトのデータベースしかなかったのが、今は「Snowflake(スノーフレーク)」や「MongoDB(モンゴDB)」といった選択肢があるように、技術面の選択肢が増えたことで戦略も進化するようになったのは事実です。

ただ何よりも重要なのが、こうしたスタートアップと大企業間の協業が可能だと示した「エクセキューション(実行力)」にあると、私は考えています。そして、アイデアそのものは昔からあったのだとしても、それができることを証明して見せたのがSozo Venturesなのではないでしょうか。

大企業も、ツイッターやスクエア、コインベースといったスタートアップの台頭を目の当たりにして、取り残されることに対して不安を感じています。この不安を醸成したことこそが、スタートアップ・エコシステムの真の力かもしれません。

中村:SOMPOとパランティアが提携に至った経緯に似た面があります。パランティアは日本市場のパートナーを探す前、フランスの航空宇宙機器開発製造会社「エアバス」と、航空部品やフリート管理に関するインフラを提供するジョイントベンチャー(JV)を立ち上げています。

センサーといった部品の交換時期を管理するプラットフォームを開発したのですが、あまりにも好評だったため、航空会社の70%以上に加え、エアバス社の競合でもある米ボーイング社も導入したほどです。パランテイアとエアバスのJVが、航空業界のデータをほとんど管理するまでになったのです。

そんなパランティアは日本市場では金融業界や医療業界に魅力を感じており、SOMPOは同社のエアバスとの取り組みに興味をもっていました。SOMPOの経営陣はベンチャー投資の経験があり、同社の米国チームは海外ビジネスの経験が豊富でした。こうした経営陣と現場のいずれもパランティアの事業内容に理解があったからこそ、成功したのです。

牧:SOMPOは本当の意味でイノベーションを成功させた数少ない日本の大企業の一つに思えますが、10年前は保険業界の競合他社とさほど大きな差はなかったように思えます。同社はどうして急速に変化できたのでしょうか。

中村:国際経験豊かな社員が多く、その彼らはM&Aも多く経験しています。それに加え、海外のビジネススクールで学んだり、グローバル企業で働いた経験をもっていたりもします。そうした社員がパランティアのような海外の一流スタートアップと組むことで、さらなる経験を積んでいるのです。
次ページ > スタートアップとの協業で「好循環」が生まれる

インタビュー=牧 兼充 写真=能仁広之

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