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2022.03.29 08:30

「極度の貧困層」に届け! 五常・アンド・カンパニー慎泰俊が財団を設立して目指す世界とは


── 関わり方は。

個人として関わる。財団は代表理事として関わるが、あくまで本業優先なので、当面は時間の5%程度を想定している。(世界最大規模の財団、ビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立した)ビル・ゲイツも、マイクロソフトの経営に携わっていた時には、財団にほとんど時間を割いていなかった。ただ、財団にとって重要な、ファンドレイジングやプロジェクト戦略などには関わっていく。

公益財団法人の認定を受けるまでには時間がかかる。また、NPO設立時も起業時もそうだったが、小さな規模でプロジェクトを始めてから、勘所がつかめるようになり方向性が定まるまでには2〜3年の時間が必要だ。財源が小さくても寄付を集めてできることをしていくことには意味がある。

会社との潜在的な利益相反を抑制する方法については、監査法人や証券会社および取締役会とも議論した。五常財団は、個人としての取り組みだが、ビジョンは五常・アンド・カンパニーと同じ「誰もが自分の未来を決めることができる世界」をつくること。2つの組織は同じ世界をつくることを目指しているため、会社にも何らかのいいフィードバックがあるとは思っている。

── どのような取り組みを行うのか。

22年は、寄付を中心に12月までに約1000万円を調達し、極度な貧困層に対する金融包摂を推進するプロジェクトに対して、1プロジェクトにつき最大500万円の助成を行う。

今後は、財団のファンドレイジングもさまざまな形を試したい。たとえば、ウクライナへの支援金を集めるためにDAO(自律分散組織)が発足したり、一部のNGOがNFT(非代替性トークン)を使って多額の寄付を集めたように、金融包摂分野でも同様のことができないか、などだ。現時点では、金融包摂分野について成功したDAOは見受けられない。クリプトを用いた資金調達を会社で行うとIPO(新規株式公開)のハードルとなりえるので現時点では実施できないが、財団の寄付資金調達であれば、いろいろなアプローチができる。

また、五常・アンド・カンパニー、五常財団で取り組んでいる「金融包摂」については、関わりたいと思う個人が多い。五常・アンド・カンパニーで22年2月に行った、(個人が企業に貸し付け投資ができる)ファンズを活用した2億円のファンドも、20時間で資金が集まった。日本の非公開企業のクラウドファンディングとしては驚異的なスピードだった。五常財団のファンドレイジングもさまざまな方法ができるのではないか、という可能性を感じている。

文=山本智之 写真=小田駿一

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