この記事は、1月17日から21日にわたってWEFがオンライン形式で開催した「ダボス・アジェンダ」の一部です。
・赤十字のような人道支援組織は、紛争や暴力の影響を受けている人々を公平かつ無条件に救援することが目的です。そのうえで、私たちが2022年に取り組まなければならない課題がいくつか顕在化しています。
・ワクチン接種事業を通じた新型コロナウイルス感染拡大との闘いに加えて、気候危機などの課題への取り組みは、紛争地域においては特に難しくなっています。
・また、デジタル技術や自律型兵器、サイバー操作の影響を考えると、人道的な分野だけでなく、より広範なパートナーや組織、政府機関による国際的な対応が早急に必要です。
カブール空港に群がる絶望にさいなまれたアフガニスタンの人々の写真が世界のトップニュースを独占した直後の2021年9月、同国の地方部を訪れた私は、掘り起こされたばかりの墓場や破壊された家が散乱している風景を目にしました。世界は今、数えきれないほどのアフガニスタン人が冬の寒さと飢えに苦しんでいることを認識しています。
当時、私は仲間たちに「支援するかしないかの二択しかない」と語りかけました。どちらの道を選ぶかで結果は変わります。完全な崩壊を防ぐために、この大混乱に苦しむ人々に無条件で手を差し伸べるのか、あるいは、政治的状況が落ち着くまで支援を先送りし、何百万もの人々が大きな困難や不安定な状態に直面するのをただ見守るのか、の二択です。
国際赤十字・赤新月運動の活動の特徴は、アフガニスタンに象徴されるように、生命と生活が破壊される状況下で必要とされる支援を公平かつ無条件に提供することです。新しい年を迎えた今、紛争や暴力の犠牲となっている人々への支援という本来の活動に加えて、人道的対応を急がなければならない課題を6つ紹介します。
1. ワクチン接種の普及
コロナ禍への対応で世界の足並みが揃わない中、新たな変異株オミクロンが急速に勢いを増しています。世界の大部分でワクチン接種が進んでおらず、私たちの対応能力の乏しさが浮き彫りになっています。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を終息させるには、避難民や社会から取り残されている人々、収容所に拘束されている人々、都市部の貧困層、暴力や紛争下に暮らす人々といった、社会的に特に弱い立場に置かれている人々へのワクチン接種が必須です。
赤十字国際委員会(ICRC)の推定によれば、現在、非国家武装集団の支配地域に暮らす住民は1億人以上にのぼります。武力紛争は突発的に起こり、インフラを機能不全に陥れます。武装集団との交渉は慎重に行わなければならず、時間もかかります。このような地域でのワクチン接種は困難が伴いますが、必要不可欠なことなのです。
私たちは2022年、この人道上の課題にもっと注力する必要があります。コロナ禍を受けて保護を必要とするすべての人々に手を差し伸べるために、地球規模で一致した断固たる取り組みが必要です。