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2022.04.01 15:30

多様性とテクノロジーの国マレーシアに、日本企業が好んで進出するワケ

クアラルンプールの新しいシンボルPNB118は地上118階、世界で2番目に高いビルとなる/photo by shutterstock.com

クアラルンプールの新しいシンボルPNB118は地上118階、世界で2番目に高いビルとなる/photo by shutterstock.com

東南アジアの中でも、多民族、多言語という秀でたダイバーシティの環境があるマレーシア。その特徴は、スタートアップにどう活かされ、また、昨今の日本とのコラボレーションを生み出す際のキーワードなどについて、合同会社NOELIZE代表で現地在住の鈴木健吾氏をはじめとするマレーシアをよく知る専門家たちに話を聞いた。
 

経済的なオペレーションコストと豊富なマルチリンガル人材


オフィスや人件費は単純比較で日本の約2/3〜1/2程度とオペレーションコストが経済的で、インフラも整っているためビジネスが始めやすいマレーシア。その上、 ASEANの中でもマルチリンガル人材が豊富な点が魅力的だ。

クレアールカンパニー社CEOの野副昌子氏は「公用語のマレー語に加え、英語や中国語など大半の方が3ヶ国語以上話すことができ、海外大学の卒業者も多くいます。日本なら中国語は中国人に、英語は欧米の人に、というように言語の数と同じだけの人数が必要となりますが、マレーシアでは1人で英語、中国語、マレー語の3ヶ国語を操り、それに加えて日本語が話せたり、広東語や福建語が話せたりという人も珍しくありません。」と語る。

一方で、転職を通じて自身の給与を上げていく習慣があり、数ヶ月で退職する社員も多く、優秀な人材を雇い続けることには困難もあるようだ。

テクノロジーに強い起業家・投資家のための「ビザ」による積極的な誘致


海外から優秀な人材を受け入れる体制も整えている。マレーシアのビザといえば、これまで主流であった長期滞在ビザMM2H(Malaysia My Second Home)が、昨年10月の基準変更により取得ハードルが上がったことが記憶に新しいが、今回注目するのは起業家・投資家向けビザだ。

国外から技術力をもつ起業家・投資家を誘致し、マレーシアで事業を立ち上げることを目的としたMDEC(Malaysia Digital Economy Corporation)主導のMTEP(Malaysia Tech Entrepreneur Programme)には、以下の3種類がある。

1:Pass for New Tech Entrepreneur

特定された技術ビジネスのアイデアを持つ創業実績のない創業者・共同創業者向け。期間は1年間で、初年度の業績により更新可能。

2: Pass for Experienced Tech Entrepreneur

技術的なビジネスアイデアが明確な創業後2年以上の実績がある創業者または共同創業者向け。5年ごとに更新可能で扶養家族を連れてくることができる。

3:Pass for Tech Investor

創業者、共同創業者、またはマレーシアのベンチャーパートナーの場合は最低資金1000万RM(約2.7億円)のファンドで、マレーシア証券取引委員会にベンチャーキャピタルマネジメントコーポレーション(VCMC)として登録されていること。5年ごとに更新可能で扶養家族を連れてくることができる。

(対象分野・技術)

アグリテック、ヘルステック、ドローンテック、フィンテック、スマートシティ、クリーンテック、サイバーセキュリティ、スマートモビリティ、人工知能、ブロックチェーン、ビッグデータ、IoTなど。(引用・参照:​​​​​​​mdec )

マレーシアを含む東南アジアで妊活支援プラットフォームを運営しているFemTechスタートアップ Lumirous Sdn Bhd.のCEOであるAnna Yamauchi氏に、実際にビザを取得するまでの流れを伺った。

「ビザは思ったよりも取りやすかったと感じました。申請後、MDECの担当者とミーティングがあり、英語で30分程度のピッチを行いました。また、ビザを提供することに対するリターンやメリット(マレーシアでの雇用を生み出せる/事業やサービスを通じてマレーシア人の生活が豊かになる等)に関するヒアリングも実施されました。ビザ取得後もMDECは協力的で、他のスタートアップやマレーシア企業と繋げてくれたり、MDEC主催のピッチイベントにも招待してくれたりとありがたいサポート環境を提供してくれています」

本ビザは、マレーシアに住んでいなくとも英語でオンライン申請でき、計6週間程度で取得可能であり、不合格の場合も6ヶ月後に再申請可能であるため、東南アジアの入口としてマレーシアで事業を立ち上げるには好条件と言えそうだ。
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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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