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2022.04.01 15:30

多様性とテクノロジーの国マレーシアに、日本企業が好んで進出するワケ

クアラルンプールの新しいシンボルPNB118は地上118階、世界で2番目に高いビルとなる/photo by shutterstock.com


Grabに続け。マレーシア発ユニコーン候補のスタートアップ企業とその特徴


マレーシアのユニコーン企業といえば、真っ先に思いつくのが2021年創業の配車アプリを提供するGrabだろう。
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ハーバード大学から出資を受け、クアラルンプールで創業されたGrabに関しては本連載の2019年5月号『配車もフードも決済も、クアラルンプールで見た「グラブ」の破壊力』で詳しく取り上げた。

そのGrabに続き、昨年、評価額が13億ドルに達しマレーシア最大のテック系ユニコーンとなったのが、2015年創業の中古車売買のオンラインプラットフォームを提供するCarsomeだ。今月には同業のiCar Asia Limitedを買収し、注目を集めた。

他にも、2014年創業の東南アジア一帯でドローンを活用した石油、電力などインフラの点検、モニタリングサービスなどを手がけるAerodyneや、2016年創業でCarsomeに出資したVynn CapitalをリードとするDropeeなどが、次世代のユニコーン候補として期待されている。
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Dropeeは、B2BのEコマースマーケットプレイスにて中小企業のデジタル化を支援しており、既に8万社以上の顧客を有する。Co-founder & COOであるAizat Rahim氏は言う。

「Dropeeは私を含むマレーシア人3人で起業しましたが、3人それぞれが海外で働いた経験があります。3カ国(英語・中国語・マレー語)の言語を話せる私たちの強みを活かすため、まずは自国で事業を開始しました。現在、AIを用いてユーザー向けのプロダクトのレコメンドエンジンを開発していて、将来的には東南アジア全域で事業を行いたいと考えています。

投資家を見つける上でネットワークは重要ですが、現時点では自社のプロダクトを仕上げる過程で投資家から打診をいただき投資が実行されました。2020年にY CombinatorのDemoday(W20)に参画したことで知名度が上がったことも功を奏したと思います」

Aizat Rahimの写真
Dropee社 Co-founder & COOのAizat Rahim氏

また、成長中の企業が頭を悩ませやすいエンジニアの採用に関しても、自社のオープンでフラットな企業文化を理解して入社する社員が多く、経験を積んだシニア層が若手エンジニアをしっかりと育成する好循環があり、良い人材採用に繋がっているそうだ。

Dropeeのメンバー
Dropee社 共同創業者Aizat Rahim氏(中央列右から2人目)と主要チームメンバー

マレーシア・スタートアップの持つ東南アジア進出への優位性に投資家も注目


スタートアップの成長を支援する上で欠かせないのが投資家の存在だ。政府系では、当地のPenjana Kapitalという12億リンギット(約330億円)のファンドが、ベンチャーキャピタルによるスタートアップへの投資を加速するため、外国投資機関による1対1のマッチング等のプログラムを運用している。

主要民間VCは、Mavcap、500 Global、Cradle、Gobi Ventures、VentureTech、1337等が挙げられる。2021年12月には、米国ドレーパースタートアップハウスがペナン拠点を設立し、当地スタートアップ向けのアクセラレータプログラムなどを実施している。

人口や経済成長の観点からインドネシアやベトナムに視線が注がれがちだが、マレーシアは東南アジア進出を考えた際に素晴らしいメリットがある。合同会社NOELIZE代表の鈴木健吾氏は言う。

「当地スタートアップ企業数は4500社超、2021年はアーリーステージの資金調達額が$165M(約180億円)を記録しました(出典:スタートアップゲノム2021年)。これまでは主に中国IT大手のアリババが1億ドル(約110億円)以上の投資実績や、地理的に市場をターゲットにしやすいシンガポール・オーストラリア企業の出資、買収が活発でした。

スマホの普及率が100%近いマレーシアではBtoBtoCモデルでアプリを介在したサービスが普及しており、特にフィンテック分野においてはデジタル化の移行が進み、E-wallet企業のTNG Digitalは2021年7月に7億米ドル(約800億円)の評価で新たな資金調達を実施しました。

その他、ヘルステックやアグリテック、インダストリー4.0が注力分野となっており、これらの領域においてマレー系、中華系、インド系の主要民族を顧客と見立てテストベット的な市場として活用するのには適切な環境と言えます」
次ページ > 進む日本企業×マレーシア企業との事例

文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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