成長続く「睡眠経済」と解消されない睡眠不足 その原因と対策は

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世界の睡眠補助の市場は年間650億ドル(約7兆9000億円)近くになり、成長を遂げている。それにもかかわらず、米国人の5000万~7000万人は睡眠障害に苦しんでいて、睡眠不足が体や脳にもたらす害により毎日のように心身の健康を損なっている人はさらに多い。

ベッドや枕から医療機器まで網羅する「睡眠経済」は、世界中で年間約4320億ドル(約52兆5000億円)に達している。2020年だけでも、米国人の半分以上は新型コロナウイルス感染症の流行により睡眠が悪化したと述べていて、76%は入眠や睡眠の継続、夜の睡眠の質の改善のため睡眠補助を購入したと答えている。

平均的な成人は1晩に7~9時間の睡眠が必要で、それを怠れば短期記憶や集中力が低下し、心血管疾患や認知症、糖尿病、がん、体重の増加の可能性が高まる。それでも、人々の睡眠は20年前と同じくらい良くないか、さらには悪化さえしている。

米国人の35%以上は現在、1晩の睡眠時間が7時間以下だ。米国立睡眠財団(NSF)の2022年の「Sleep in America Poll(米国の睡眠調査)」によると、この数字は過去20年間極めて一貫している。全体的な数字があまり変わっていないのであれば、2022年の睡眠パターンや睡眠障害に関して変化したことや悪化した点は何だろう?

NSFは最新の「米国の睡眠調査」で、睡眠不足の理由が私たちの毎日の習慣やルーティンとともに変化していることを発見した。これは、プライベートと仕事が一体化し、スケジュールが大きく変化し、電子機器の画面を見る時間やアルコールの摂取量が増加したコロナ禍に特に当てはまることだ。



睡眠の質をますます悪化させている2022年の主な行動要因は次の通りだ。

・米国人の半分以上が就寝前の1時間、あるいはベッドに入ってからも電子機器を使用している。

・約60%はベッドに入る前やベッドに入ってから携帯電話やタブレット端末、コンピューターの画面を見ていることを認めていて、それが睡眠時間や睡眠の質の悪化につながっている。

・米国人の半分近くが1日に推奨される量の光を浴びておらず、夜は(携帯電話などの)人工光を浴び過ぎていると答えている。これはそれほど明らかな問題に思われないかもしれないが、光を浴びること(特に屋外の自然光)は睡眠覚醒サイクルや食習慣、消化、体温などの要素をつかさどる体内時計「概日リズム」を制御する上で重要な役割を担っている。

・身体的な活動は、しっかりとした睡眠を確保する重要な要因としてよく知られている。しかし、米疾病対策センター(CDC)の中程度、または活発な活動の推奨量を満たさない米国人は3分の1以上に上る。また米国人の約10%は、日中に中程度の運動を行っていないと報告している。身体的活動は夜の睡眠を促進するだけでなく、ストレスの緩和や気分の改善などの効果もある。
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翻訳・編集=出田静 写真=Getty Images

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