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2022.04.09 11:00

ワタリウム美術館CEOに聞く、センスのいいアートとの付き合い方

ワタリウム美術館 ディレクター 和多利浩一(左)、Urban Cabin Institute パートナー山田理絵


和多利:常識を捨てて、自分自身をいつもオープンマインドにすること。新しい美術を受け入れる時、今まで綺麗だと思っていたものとは全然違うものが美術として登場してくるわけなので、毎回気持ちをリセットして、どんなものにでも対応できる柔軟性と頭の柔らかさが必要です。それは結局、今の時代をサバイブする上で全てのジャンルで共通します。
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アーティストたちは、僕が考えうるものとは全然違う考えを持ってたり、視野が広かったり、上に高かったり、とんでもないプランを提案してきます。だから僕は今でも新しい若いアーティストと喋るのが一番好きです。

山田:海外と比較して、文化の文脈で日本がすべきことは?

和多利:その話題については絶望的かな。日本の国の文化戦略をみるとき、あまりにもお粗末と言わざるをえない。先進国の中で、おそらく最も美術館の予算が低いだろうと思います。MOMAやテート美術館がやるような大掛かりで重要な展覧会を日本に巡回させることが困難になり、文化を産業と捉えている中国や韓国、シンガポールに完全に負けてしまっています。
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中国は2000年に、ニューヨークのグッゲンハイム美術館で開催された大中国展で、古い中国と現代アートを一堂に見せて、「展覧会というのは国の力なんだ」ということに気づいたのだと思います。中国で政治批判しない限りは文化をサポートすると決めて文化政策を強めてきました。

山田:韓国も国策的にアート、エンタメを推していますよね。

和多利:韓国は国としてBTSをバックアップして、国の印象を引き上げたように、フリーズというインターナショナルなアートフェアを誘致し、アートの世界流通に乗り出しています。これで日本はまた水をあけられたと思います。唯一日本に可能性があると思えるのは、アジアのベストアーティストのランキングに比較的日本人アーティストが多いことでしょうか。庭やお茶、食べ物など、他の国にないハイカルチャーがまだちゃんとあることも強みですね。

右肩上がりだった自慢の経済がダメになってしまったのだから、今度は文化やスポーツが国のステータスを上げていくといった政策を立て、文化のエキスパートになれるような政治家が「文化は絶対に国策として大事です!」と予算をガッツリ取って進めない限りダメ。小手先で一時的にやっても無理でしょうね。


「パビリオン・トウキョウ2021」で青山の空き地に出現したサイドコアの作品

山田:最近ビジネスで成功した方がアートを使ってご自分の故郷を活性化する取り組みが前橋や瀬戸内にありますが、どうご覧になっていますか?

和多利:アートがインバウンドを集客することはこれで証明されていますよね。地方自治体はそのことを早々と掴んで、地域の特色としてアートとを入れて芸術祭などを行っています。

ワタリウム美術館も、音楽家の小林武史さんと、津波の被害が一番受けた宮城県石巻で2017年から「リボーン・アートフェスティバル」という芸術祭を続けています。食、音楽、現代アートの3本柱で観光という枠組みだけでなく、被災地の復興と精神の豊かさを目指すもので、2022年の8月から3回目がスタートします。

しかし国レベルでは大きすぎるのか、重すぎるのか、なかなかそうしたことが実施されていません。完全に取り残される前に気づいて、動いてくれると良いのですが。

文=山田理絵

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