ワタリウム美術館CEOに聞く、センスのいいアートとの付き合い方

ワタリウム美術館 ディレクター 和多利浩一(左)、Urban Cabin Institute パートナー山田理絵


山田:エスタブリッシュされたものを集める方と、レイジングを応援する方、その辺りはいかがですか?

和多利:最近のコレクターたちは両方ですね。ハイプライスの有名な作品を3、4割、あとは若いアーティストをサポートするというケースも多い。日本はどうしても有名なアーティストを購入する人が多いようですが、海外では、「あ、この作家の作品を持っているのかー、早いね」と噂になります。お茶室の床の間の軸とお花の取り合わせのように、「この作品の横にこれを置く」っていうセンスを見せたいのです。

山田:これからのアーティストたちはどうやってピックアップするのですか?

和多利:僕らの場合はもう40年くらい作品を見ているので、なんとなく直感的に分かってしまう。どこのギャラリーで展示していたか、どんなコレクターが見ていたか、そんな様子もなんとなく頭に入っていて、そろそろこのアーティストは出てくるなーと感じます。

もう一つ、有名になるとお金や名声に走っちゃうアーティストと、さらに面白いことをやりたいと思っているアーティストに分かれていくので、どっちを支援していくか、それも醍醐味です。僕らはどっちかというと後者を応援していきたいですね。



山田:ワタリウム美術館を訪れるハイエンドなコレクターやアートファンはどんな方々ですか?

和多利:コロナ前は4割くらいが海外の方でした。日本のアート情報は海外に発信されていないので、僕らは海外のアートファンやコレクターたちに、日本では今、どのアーティストが面白い、どこにいくと彼らの作品を見ることができるといったアドバイスをすることが多かったですね。

山田:どうして日本は情報発信が弱いんでしょうか?

和多利:語学の問題が大きいでしょう。あと地理的な問題。また、日本のローカルなアート界は独特の分かりにくさを持っています。

例えば、一定の作家の人気が出て、国内のオークションで突然ガーンと上がってしまう。あるいは、国内で実績もあるけれど、海外で発表していないためインターナショナルには全く知られていない。または、作品が小さかったり、作品点数が少なくてインタナショナルなマーケットは適さないとか、やはりまだ文化の違いがでてしまいます。僕らとしても結構歯痒かったりします。

山田:足踏みをしてしまったり、作品が小さかったりしするアーティストには何か助言されるのですか?

和多利:いや、それはもう作家の問題なので。アメリカのマーケットは最低でも1.5メートルや2メートルといった大きい作品じゃないとダメな場合が多いので、日本サイズで飾れるような作品はあまり好まれないんですよ。
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文=山田理絵

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