走り出してから約3年、完成した「IKOU ポータブルチェア」は、生後7カ月〜3歳ごろまでの乳幼児が使うことができるものとして、2022年4月に発売予定。現在は先行してクラウドファンディングを実施、スタートから5日で約7割の支援が集まっている。
大人向けの椅子に簡単に取り付けることができるため、家ではもちろん、外出先のイスの心配が減り、家族の行動範囲が広くなる。床置きもできるため、例えばピクニックでずっと子どもを抱えていなきゃいけない、ということもなくなる。
(c)IKOU
障がい児サポートを考えたティルト機能も、「身体のカーブを保ったまま座らせられるため、安心して眠ってくれる」「自然と上向きになるので、哺乳瓶を吸わせやすい」と、健常児ファミリーにも好評だ。
「ユーザーを選ばない」
2021年冬に某競技場で行ったスポーツ観戦の実証実験では、参加者から「車椅子だと疎外感を感じてしまう。普通の観客席で一体感を味わえて楽しかった」「一席追加購入してでも、ポータブルチェアを利用して観戦したい」という反応があり、すでにいくつかのスポーツチームや競技団体と話が進んでいる。
同様のことは、公共施設、カフェやホテル、テーマパークなどにもいえるだろう。IKOU ポータブルチェアは、「それが置いてある場所=ユーザーを選ばない」というインクルーシブの象徴となりえる。D&Iが叫ばれている中で、この思想の共感し、設置を希望する企業や施設は続々と登場しそうだ。
シンプルなデザイン故に、コラボレーション先に合わせて色を変えたり、ユーザーが好みの色柄にカスタマイズできるというのも面白いかもしれない。「車のチャイルドシートとしても使えたら嬉しい」というリクエストも多く、車載への対応も検討しているという。
「起業するなんて思ってもいなかった」ところから間もなく2年。「新しい市場をつくるには、試しながら学んでいくしかない」と語る松本は目下、IKOUの世界観をスケールさせるための体制づくりに取り組んでいる。
椅子の上においてシートを開き、2つのベルトで座面、背もたれに固定。背もたれとヘッドレストを調整するだけ
IKOUの価値を理解し、賛同するメンバーが増え、パートナーも増えていけば、社会は着実に変わっていく。近い将来、どこでこのイスを見かけることになるのか、今から楽しみだ。