・新型コロナウイルスにより世界中の人々が行動を制限されていますが、世界に13億人いる障がい者にとって、こうした環境は日常的であると言えます。
・働き方の大きな変化は、障がいを持つ人たち対しても適応可能だということを示しています。
・「インクルージョン革命」はビジネス上の命題として強く叫ばれていますが、道徳的な命題としてもより一層強く求められています。
障がい者の排除で、OECD諸国にGDP7%の損失
新型コロナウイルスの世界的蔓延がさらに広がり、各国政府はさまざまな形で国民を隔離する、ロックダウンの政策を取っています。自分自身や家族のウイルス感染により自宅隔離や入院を余儀なくされることで、世界中多く人々が、突如日常生活から切り離され、孤立感を味わう。長い歴史上初めての事態が、今起きています。
しかし、このように「普通の」生活から切り離された感覚や、孤立感を日常的に味わっている人々は多く存在します。こうした人々は、ロックダウンが終わり正常な生活に戻る日を待ちわびることはありません。残念ながら、高齢者、そして世界に13億人いる多くの障がい者を含め、孤立や排除が日常の一部となっている人々が、世界人口に占める割合は高いのです。
障がいのある人々の多くは、パンデミック終息後に「いつも通りの仕事」に戻ることはできないでしょう。それが彼らの日常なのですから。しかし、彼らの日常はこのパンデミックを通じて変わらなければならなりません。障がい者が普通の生活を制限される時代は、あまりに長く続いてしまいました。
その証拠に、就労年齢の障がい者の雇用率は障がいのない人々より28.6%低く、障がい者も募集対象とした職のオファーに取り組んでいる企業が4%にすぎないことが、すでに知られています。しかし、障がい者の排除は、OECD諸国にGDP7%相当の損失をもたらしており、障がい者はその友人や家族を含めると8兆ドルの購買力を生み出せる存在なのです。
ビジネスは今、極めて急速に動いています。ウイルスがもたらす影響に迅速かつ柔軟に対応し、従業員と顧客を等しく保護するためすばやく措置を講じています。短期間でリモートワークが普及し、弱い立場の人たちだけが利用できる時間帯が各店舗で設定され、テレビ会議が急激に増加しています。
この1か月で労働慣習に生じた大転換は、多くの企業における基本的な疑問に答えを出しました。従業員の大半をリモートワーク環境に適応させ、なおかつ、その状態で利益を上げることができるのだろうか、という疑問です。大半の企業にとって、答えはイエスです。これが可能であると知ることは、ビジネスにおける障がい者のインクルージョンに大きな意味を持ちます。1カ月という短い時間で導入された新しい労働慣習の多くは、障がい者の事業参画だけでなく、ビジネスの繁栄をもたらしうるものでもあるのですから。
世界中の企業は、障がいのある人々のインクルージョンをさらに推し進めるため、この時期に得た学びを必ず生かさなければなりません。私たちが今使用しているツールをそのまま流用して、障がい者コミュニティが職場に全面参加できるようにするのです。無理だという言い訳はできません。78億人のうち多くの人々がテレワークに適応できているのですから、障害のある13億人もまた適応できるようにする必要があります。