APPLE/UNICODE

アップルはiOS13.2のアップデートに伴って2019年、「世界絵文字デー」の7月17日に合わせ、60種類近い新しい絵文字を発表したことは記憶にあたらしい。絵文字キーボードには人種を越えたカップルやジェンダーフリーのものなどとともに、長く待たれていた障害をテーマにしたキャラクターやアイコンが含まれている。

そしていまやアップルの絵文字には、盲導犬や車椅子に乗った人、義肢などが並んでいる。

取り組みは2015年からだったが━━


2015年の初め、アップルは絵文字を多様化しようという進歩的な取り組みを始めたが、「障害」に関する絵文字はこれまで実現されなかった。

ようやく2018年になって、アップルは障害を持つ人々の絵文字を加えるべきだと主張し始めた。アップルはユニコード・コンソーシアム(絵文字の国際規格を管理する非営利団体)に対して、障害者を表す13種類の新しい絵文字を導入するよう提案した。

アップルは2018年3月の提案書に、「いまや広範囲にわたる絵文字が存在するが、障害を持つ人々の体験を表現できているとは言い難い」と記している。「選択肢を多様化すれば大きなギャップを埋める助けになり、すべての人々がより多くの体験を表現できるようになる」。

障害者はアメリカのマイノリティの中でも最大のグループを形成しており、これほど長くアップルが絵文字の追加を行わなかったのは意外とも言える。とりわけ、誇りをもって障害を持つ人々への製品やソフトウェア供給を約束してきた企業だけに、こうした絵文字は2015年のダイバーシティーとインクルージョン、つまり共存と共生への同社の努力に含まれてしかるべきだった。

「知的障害者」の絵文字がない?


数多くの障害者支持団体が画期的出来事としてアップルを賞賛する一方で、障害者とその関係者の中には建設的批判を行う人もおり、大半は知的障害者を表す絵文字が欠落している点を指摘するものだ。一例を挙げると、障害者問題に取り組んでいるジャーナリストで、ダウン症の10代の子供を持つエイミー・シルバーマンが「ワシントン・ポスト」紙にこんな記事を寄稿している。

「世界共通の、青地に白の車椅子の人を描いた障害者のシンボルマークと同じで、この絵文字もすべての障害者を取り込んでいるとは言えません」とシルバーマンは書いている。同時に彼女は、ステレオタイプや侮辱的にならずに、ダウン症や知的障害、発達障害に関する絵文字にデザインするのはとても難しいことも認めている。

シルバーマンはこう続ける。「絵文字は一目見て、わかった気になります。車椅子の絵文字を使って『あなたって体が不自由なんだ!』と言ったり、補聴器の絵文字で『あなたは耳が聞こえないの?』と尋ねたり、文章にはしにくいことも簡単に表現できてしまう怖さがあるのです」

アップルの「障害者絵文字」発表が遅れた背景には、こういったことを逆に助長することを避ける動きがあったのかもしれない。

ただ一つ。もしアップルが2014年に「障害者との共生」絵文字を、2015年に「多様性」絵文字を作った頃から考えを深めていたら、もっと広い範囲の障害を表す絵文字についても、多様な人種のキャラクターと同じぐらい完成度の高いものを作る時間がとれていただろう。

とはいえアップルは、微妙な一線を踏み越えて厄介な問題を引き起こさないよう注意する必要がある。近年、アメリカでは知的障害者を表現する医学用語や社会用語から差別的表現を取り除く努力が行われているが、いまでも軽蔑的な言葉は社会の主流をなす文化の中で数多く使われている。

たとえば、かつてトランプ大統領の行動を「低能」と評したカーマラ・ハリス上院議員はその後すぐに、「侮蔑的な言葉を使った」と謝罪している。

アップルは障害全般にわたる絵文字の開発を継続するとともに、ユーザーが障害者関連の絵文字をどのように使っているか、注意深く見守っていく必要があるだろう。

翻訳・編集=川崎稔/S.K.Y.パブリッシング・石井節子

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