主催したのは、連載第一回でも解説した「イノベーションデザイン・プラットフォーム(IdP)」。関係者同士で情報共有してネットワークを強め、大学発スタートアップエコシステムを構築していく目的で開かれた。
初回となった12月のイベントでは、東京理科大学認定ベンチャーファンドの運営会社である「東京理科大学イノベーション・キャピタル」の代表取締役マネージング・パートナーを務める片寄裕市が登壇した。
実は、東京理科大学は2015年から日本が課題としてきた大学発スタートアップ育成に注力し実績を積み上げてきた代表的な私立大学だ。
東京理科大学は、2016年に1号ファンド、2019年に2号ファンドを設立し、年間約300件の案件分析を行い、うち約200件と面談。これまでに100件の事業化支援に加え、29社(2021年12月末時点)に投資をしてきた。
自身も理科大出身の片寄は、2003年の大学院修了後に第一生命保険に入社。米国留学を経て、ゴールドマン・サックス・グループの資産運用部門であるゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントに勤務した異色の経歴を持つ。
彼がイベントで語ったのは、確固たるスタートアップへの投資姿勢だった。
キャリアの大半を、プライベートエクイティ(未公開株式)やヘッジファンドといった投資業務に携わってきた片寄。
理科大に舞い戻るきっかけとなったのは、2014年に当時の東京理科大学の理事長からかかってきた一本の電話だったという。
「当時、理科大がMIT(マサチューセッツ工科大学)の経営大学院から起業加速プログラムで連携することになり、ベンチャー支援機能の強化が行われた。加えて、大学のベンチャーキャピタル(VC)や大学基金を実現するため協力要請がありました」
突然の誘いから1年後の2015年、片寄は理科大に移籍。ともに事業計画を立案した農林中央金庫出身の高田久徳(共同体表)と大学認定VCを設立した。2号ファンド設立に際し、上場スタートアップのCOO経験を持つゴールドマン・サックス時代の元同僚、田嶋周平が管理部長に就任した。
理科大生以外も支援
東京理科大学イノベーション・キャピタルの投資先は、大学発スタートアップに限らない。
片寄は、「理科大自体がサイエンスで世の中を良くしようと設立された大学です。学内外を問わず、先進技術の開発や新サービスの導入支援を行い、社会の健全な発展に寄与するベンチャー支援にも取り組もうという想い」と設立背景を明かす。
現在は、ベンチャー出資機能を担う「東京理科大学イノベーション・キャピタル」、起業支援イベントの開催や、事業創出機能を担う事業会社「東京理科大学インベストメント・マネジメント」、研究の事業化を担う「東京理科大学研究戦略・産学連携センター」とともに、東京理科大学のベンチャーエコシステムである「Tokyo University of Science Innovation Driven Ecosystem」、通称「TUSIDE(トゥーサイド)」を構築。
3法人が協働、連携を行うことで、大学発ベンチャーの創出を加速させ、次世代産業を生み出す取り組みを推進している。