「事業環境やリスクマネーを供給する資本市場の素地が異なるが、シリコンバレーで同じ労力をかけたら、日本の何倍も資金調達できると思える技術やサービスがあります。アメリカは人口で3倍、GDPで5倍の違いはあると考えてみても、ベンチャー企業や新規事業の投資に回される金額はまだ少ないのではないでしょうか」
また、公正取引委員会が発表したレポートも提示。2016年を基準とした創業から0年以上5年未満の企業が457万人の雇用を生み出したのに比べ、10年を超える企業が失った雇用は450万人以上にのぼる。
「企業には栄枯盛衰があり、新しい企業には雇用を生み出す環境、新陳代謝がある」と、スタートアップの必要性を訴えた。
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片寄によると、日本の大学や企業は現在、「事業を立ち上げさせるまでの起業家教育」に取り組んでいるという。「『起業する道もあるんだ』という考えを持っていれば、就職後に新規事業担当や新技術の開発担当になったときに教育が効果を発揮する。それだけに、学生のうちに学んでおく意義があるんです」と、自身も行う取り組みについて語った。
「エンジニアとして就職する大学院生であっても、30代半ばになれば管理職やプロジェクトマネージャーとして、事業採算に責任を持ち、成果を出せと言われる。そのときにはじめて、『いきなりそんなこと言われても』とならないために、技術を事業化する力が問われ、マネジメント・ オブ・ テクノロジー(MOT:技術経営)が重要になってきます。効果は後になってわかるものの今から教えるべきで、私も大学院工学研究科の『経営戦略特論』という講義で伝えています」
アカデミック起業の最前線について、現状から課題まで語られたミートアップ。最後は、「志を持ち失敗を恐れずに新しい挑戦をすれば、我々も応援する」との言葉で締めくくられた。