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2022.03.08 08:00

出資先2社がIPO 「理科大VC」のスタートアップ投資スタイル


2021年10月に発表されたトゥーサイドについて片寄は、「ベンチャーキャピタル、インキュベーション施設、産学連携センターがそれぞれ独立するのではなく、連携して価値ある企業を最後まで支援するため」と意義を語る。

「大学発のスタートアップ投資では、起業家教育や、事業の創出・支援機能を合わせたエコシステムを形成することが成果を出すうえで有効です。これらの機能を備えている大学はあっても、オープンラボとして外部に開放している大学は存在しなかった。トゥーサイドのインキュベーション施設はオープンラボにして、理科大生以外も幅広く支援できるようにしています」

一気通貫のシステムを最初に発表した理科大は、現在115億円規模のベンチャーファンドを運営する。2号ファンドからは外部出資も受け入れ、理科大発や卒業生による起業に限らず、先進的な技術やサービスの開発に出資。

「理科大のベンチャーエコシステムが有するネットワーク、資金力を駆使して支援する」というスタイルだ。これまでの投資先は29社で、1社当たりの平均額は約2億円。企業の選定に関しては、「出資時の企業価値を重視している」とのこと。

「特に時価総額20億円を超える企業のデューデリジェンスはかなり厳しくやっています。投資委員会では、時価総額10億円以下、10億円〜20億円、20億円以上と幾何級数的に判断が厳しくなる。事業の可能性だけでなく、実績をともなっているのか、しっかりと価値を創出しているかを見ています」

また、少額を出資するのではなく、取締役の派遣をはじめ、一定の結論に達するまで支援する体制をとる、“ハンズオン支援”を実践。直近で運用している2号ファンドの約8割の投資先はリード投資家となっている。片寄自身も、実際に複数年にわたって出資先企業の取締役をつとめてきた。

これまでの出資先としては、転職サイト「ビズリーチ」の運営会社を傘下に持つビジョナルや教育系ベンチャーのInstitution for a Global Societyがある。それぞれ2021年4月、同年12月にIPOを果たした。また、ホームページ作成サービスを運営するペライチはラクスルが買収。IPOやM&Aによって、投資資金の回収もすでに行われている。

とはいえ、スタートアップ業界は玉石混交。当然、華やかな成功物語ばかりではない。「技術は本物でも、契約書に受け入れられない投資条件が書かれていたということもある」といい、さまざまな理由から出資を見送る案件も少なくない。

457万人の雇用を生みだすスタートアップ


片寄はミートアップで、「大企業も自前での新規事業開発からベンチャー企業との連携にシフトしている」と、日本の投資環境にも言及した。現在はコロナ禍にも関わらず、国内で2000億円を超える新規事業への投資が行われているという。一方、アメリカを例に出し、日本の資金調達環境についての課題も明かしている。
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文=小谷紘友 編集=露原直人

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