ビジネス

2022.03.07

不眠障害治療アプリのサスメド 分岐点は「医療への一本化」

サスメドCEO 上野太郎(撮影=曽川拓哉)


当初サスメドが検討した事業は2つ。不眠障害治療用の医療機器開発と、企業向けに提供する従業員の睡眠の質を高めるヘルスケアアプリだった。

「ヘルスケアはサスメドが手掛ける事業として優先度は高くないものの、(薬機法などのハードルがないため)ビジネスとしての可能性はあると感じていました」

ターニングポイント2 医療分野に一本化


会社設立後、NEDOのピッチイベントで、最初の資金調達先となるビヨンド ネクスト ベンチャーズの植波と出会う。実は、上野と植波は高校の同級生。出席簿順に上野(うえの)と植波(うえは)で前後に座っていたこともあるという。

旧知であるにもかかわらず、再会直後は互いに同級生であったことに気づかず、上野にいたっては当初、投資家という存在に警戒心を抱いていた。

「ベンチャーキャピタルという言葉自体知りませんでした。言い方が悪いですが、本当に信用していい人たちなのか、と思っていたので、エナジードリンクを飲んで気合を入れてから、彼に会いに行っていました(笑)」

起業家と投資家という立場で再会した2人は、どのような点に共鳴して、資金調達にまで至ったのか。

植波が注目していたのは、技術的優位性や事業可能性だけでなく上野の「巻き込み力」だった。

「再会した直後、上野さんのリソース配分としては、研究者6割、臨床医3割、残り1割が起業家でした。再会してから出資までの1年間、上野さんが起業家としての活動にどれだけコミットしていけるのか、また事業にコミットする優秀な人たちをどのくらい巻き込めるか、という2点を見ながらディスカッションを重ねていました。

不眠障害治療というマーケットのポテンシャルには可能性を感じていました。ただ、それ以上に注目したのは経営者としての上野さんです」

ビヨンドネクストベンチャーズ
ビヨンド ネクスト ベンチャーズ 植波剣吾

「製薬会社、学会など、上野さんにはファンがたくさんいます。知見の深さはもちろんですが、真面目さ、ひたむきさ、志の高さから来る『応援され力』が彼の持ち味です」

一方の上野は、植波とビヨンド ネクスト ベンチャーズについては次のように語る。

「ビヨンドさん自身も、設立間もない頃(2014年創業)だったのでサラリーマン的ではなく自らもリスクを取ってでもその事業にかけようという姿勢があり、そこに共感しました。ディープテック領域に投資されるということもあって、早期の黒字化ではなく長い目で将来の医療をつくるというスタンスを理解してもらったと思います」
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文=露原直人 撮影=曽川拓哉

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