ビジネス

2022.03.07

不眠障害治療アプリのサスメド 分岐点は「医療への一本化」

サスメドCEO 上野太郎(撮影=曽川拓哉)


ターニングポイント3 承認申請に向けた治験を完了


サスメドは前述の資金調達を経て、社会実装に向けた治験を開始した。

「IPOに向けては、厚労省に医療機器としての承認申請をするための治験を終えたことが一番のターニングポイントでした」と上野はいう。

治験には複数の段階がある。まず、厚労省所管の「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」と、どういった手順を踏めば製品としての有効性や安全性を証明できるかについて議論を重ね、そのうえで治験がスタートする。

サスメドは実薬とプラセボ(偽薬)の比較試験も行い、一連のプロセスを経て有効性と安全性の評価を実施。

3年以上をかけ、2021年11月に承認申請に必要な治験を完了し、翌月12月に上場した。

上場準備へのサポートもしてきた植波は「サスメドは、プロダクトの開発はとても順調でした。しかし、上場会社としてふさわしい体制を整備するのは苦労しました」と当時を振り返る。

これはディープテックスタートアップに限ったことではないが、少ない従業員で開発スピードを落とすことなく、かつCFOや管理部門のメンバーをそろえる上場準備はコストも生じる骨の折れる仕事だ。

ビヨンド ネクスト ベンチャーズは、インハウスのヘッドハンターを介してCxO人材をサスメドに紹介するなど、体制構築も支援。証券会社や監査法人などの上場関係者との交渉についても、植波ら同社メンバーがサポートしていたという。

上場数日後には塩野義製薬と販売提携を発表。2月1日には厚労省に製造販売の承認申請も行った。

薬に頼らない不眠障害の治療が実現する日が、いよいよ一歩近づいてきたというわけだ。

今後も、上野の「巻き込み力」や「応援され力」で、さらに不眠障害治療のマーケットが開拓されていくことに期待したい。サスメドの大きな飛躍はこれからだ。

文=露原直人 撮影=曽川拓哉

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