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2022.03.02

背中を追いかけ合った起業家たちの「10年ドラマ」──Meety1.9億円調達の裏側

HIRAC FUND代表パートナーの古橋智史(左)とMeety代表取締役CEOの中村拓哉(右)


「市場を変えるプロダクトでなければ、人生をかける意味がない」


中村にとってHIRAC FUNDとパートナーシップを組む理由は、「起業家なら誰でも刺さるだろう」という同ファンドのコンセプトにもある。

企業の急成長を牽引してきたスタートアップ起業家や経営陣などが参画しているHIRAC FUNDは「本音で相談できる、安心感が違う」と中村は語る。この安心感こそ、古橋がこのファンドを立ち上げた一番の理由だった。

「私自身、スマートキャンプ を経営しているときも、本当の意味で相談できる人はほとんどいなかった。やっぱり事業をやってる人じゃないと分からない悩みは、絶対にある。もちろん、VCの立ち位置としては、そうでない第三者の視点も大事なので、両軸あるべきですが、日本の場合は起業家目線があまりにも足りていないと感じます」(古橋)

この想いは、HIRAC FUNDの“3つの約束”の一つ、『起業家との「心理的距離」を無くします。』として、宣言されている。起業家が抱える不安、苦悩、葛藤。それらを古橋自身が身を以て経験してきたからこそ、教科書的でないアドバイスをすることができるのだ。

「例えば『役員報酬をいくらにするか』なんて、生々しい相談ですよね? そもそも、起業家がこの相談を投資家にするとき、恐る恐る話を切り出すことが多い。私は、そうやって投資家にお伺いを立てるように相談することにも違和感を感じます。見合うリターンが出せる自信があるなら堂々と相談してほしいです。だって、誰よりもリスクを背負って挑戦しているんですから。ここで堂々と交渉することで、起業家を夢のある仕事にできるはずだ、というのが私の考えです」(古橋)

HIRAC FUNDという強力なパートナーを得て、2021年8月から、IT業界の人気企業の利用をきっかけにMeetyは爆発的な成長を遂げた。そして今回のラウンドでの調達である。

2021年、熱狂を作ることはできた。2022年は事業としての土台を固める一年になると中村は展望を語る。現在Meetyは多くのユーザーを集め、注目されているが、マネタイズはこれからだ。

「マネタイズに向けて、月間の獲得リード数、チャーンレートなどのデータが出てくると、それらKPIを達成するための機能、つまりユーザー体験より売上重視の機能開発を優先したくなる状況が作られやすくなってしまう。

特に、VCからはそのロジックに則ってフィードバックされると思います。そして、それに従うのは簡単なことです。でも、ユーザー体験の良さと満足度の高さがMeetyの強み。この強みをブラさない姿勢を、HIRAC FUNDさんなら理解して見守っていただけると思っています。」(中村)

Meetyが仕掛けるHR市場は、エージェントにSaaSサービス、メディア、数多のプレイヤーがしのぎを削る成熟市場だ。だからこそ、中村はそこそこ稼げるけど既視感のある、そんなプロダクト作りに甘んじるつもりはない。

「やるなら市場を変えるようなプロダクトじゃないと、人生をかける意味がない。これまで他社がやれていない程、候補者視点に振り切って、市場の一角を担うプロダクトを作り上げます」(中村)

Meetyが掲げる、“候補者体験ナンバーワン”というプロダクトビジョン。それはシンプルなロジックを積み上げた先にあるものではない。

葛藤に耐えながら、志をブラさない覚悟を胸に、泥臭い改善を続けた先にこそある。

一人なら孤独な辛い道のりだ。ただ、心強いパートナーを得た中村にとっては、武者震いするような刺激的な日々になるだろう。

文=萩原愛梨 写真=小田駿一 編集=後藤亮輔

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