ビジネス

2022.03.02

背中を追いかけ合った起業家たちの「10年ドラマ」──Meety1.9億円調達の裏側

HIRAC FUND代表パートナーの古橋智史(左)とMeety代表取締役CEOの中村拓哉(右)


スマートキャンプは順調に成長する。まるでロールプレイングゲームをやりこむかのように、人生のほとんどの時間を費やし、経験値を稼いではレベルアップを続ける......古橋を見ながら、中村は進路に悩んでいた。

「Speeeが出資をしたスタートアップへ出向するか。それとも古橋さんのスマートキャンプの門戸を叩くか、悩んでいました。前者は社員も1名程度のアーリーステージのスタートアップ。将来の起業を見据えると、まさに立ち上げを経験できる点が魅力的で。

一方で、スマートキャンプで古橋さんの仕事を間近でみたい気持ちもありました。元々彼を知っているからこそ、経営者として成長した姿を線で見ることで、スタートアップの代表たるものへの解像度を上げることができると思ったんです」(中村)

null
株式会社Meety 代表取締役CEO 中村拓哉

揺れ動く気持ちの中、中村はスマートキャンプへの移籍を断った。ゼロイチの経験を積めることが最大の決め手ではあったが、後輩の会社へ入社することへの割り切れない気持ちも正直、存在した。

「ここでスマートキャンプへいけば、構造的に古橋さんを抜くことはもうできない。僕は僕の道を作って、彼に追いつき、追い越したい」

中村の意向を尊重した古橋も、それ以降、口説くことを止めた。

また、道を分けた二人。

その後、スマートキャンプはさらなる成長を遂げ、2019年、マネーフォワードへ売却。古橋は、HIRAC FUNDを運営するマネーフォワードベンチャーパートナーズの代表に就任した。

起業から売却、そしてマネーフォワードの経営陣入り。一方、中村はまだ起業に踏み切れなかった。

中村はふたりの差について語る。

「古橋さんは、次々とプレッシャーのかかる“アウェイ”な環境に身を置いて成長していきました。今なんて百戦錬磨のマネーフォワードの経営陣の方々に混ざり、最年少ながら貢献をしている。僕はSpeeeで新規事業も含め挑戦させてもらいしたが、なんだかんだ居心地の良い選択を続けていたのかもしれません。結果論になるけれど、“アウェイ”への踏み切り力こそ、今の二人の差になっているのでしょう」(中村)

先を走り続ける古橋の姿は、中村のモチベーションになった。そして、2019年いよいよ中村は独立し、2020年にMeetyをリリースする。

投資を決めたのは、Meetyの可能性──そして中村の力強さ


Meetyリリース直後、ある食事会で二人は再会する。古橋がHIRAC FUNDを設立したばかりの頃だった。

近況報告をし合う中で、古橋はMeetyに興味を持ち、改めてアポイントをとることに。この再会が、VCと出資先という二人の新たな関係に繋がっていく。
次ページ > Meetyの特徴は、候補者主体のカルチャー

文=萩原愛梨 写真=小田駿一 編集=後藤亮輔

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事