そこで、アフリカのスタートアップに投資を行うアンカバードファンド代表キャピタリストの寺久保拓摩氏に、近年のアフリカのスタートアップ・エコシステムの急成長について尋ねた。
アフリカが長年抱えてきたペインを解消するスタートアップ
2021年はアフリカのスタートアップエコシステムにとって大きな転換期となった。寺久保氏はその成長を見てきた。
「アフリカスタートアップへの投資額は、昨年ついに約4700億円を超え、前年比2.5倍と急成長しています。私がアフリカのスタートアップに関わり始めた2017年はまだ560億円程度でしたので、たった5年でアフリカのスタートアップへの投資額は約8倍に成長しています。このことからも、近年、世界がアフリカに寄せる期待値の高さがうかがえるでしょう。
セクターに分けると、投資額の約60%はフィンテックに集中しており、融資、貯蓄、決済、送金に関連する事業に多くの投資が行われています。アフリカの人々は、銀行口座を開設できないケースも多く、お金に関係する多くのペインを抱えています。その一方で、デジタルサービスの普及によって、長年抱えてきたペインの解消が進んでいるため、積極的にデジタルサービスを導入しています」。
多くの国民が生活の質の向上のために、新サービスを求め、積極的に活用していく姿勢を持っていることが、スタートアップの成長を大きく後押ししているのだ。
過去5年間の成長により大型調達が増加
2016年に、アフリカ版アマゾンと呼ばれるアフリカ最大のeコマースプラットフォームを提供する〈JUMIA〉が、アフリカ初のユニコーン企業となった。更に2019年には、アフリカの大手テック企業として初のニューヨーク市場へのIPOも果たした。
2020年には、オンライン決済サービスを提供する米国のStripによる同サービス提供を行うナイジェリアの〈Paystack〉の$200M規模のM&Aや、オンライン送金サービスを提供する英国のWorldRemitによる同サービス提供を行うケニアの〈sendwave〉の$500M規模のM&Aなど、アフリカのスタートアップの大型EXITの事例も目立った。
この勢いは止まることを知らず、2021年には1億ドルを超える大型調達の増加によりユニコーン企業の誕生が相次いだ。中でも、モバイル決済プラットフォームを提供するナイジェリアの〈Opay〉はシリーズCラウンドで$400Mを調達。Softbank Vision Fund 2がリード・インベスターを務めており、現在は約2000億円の企業価値に成長した。