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2022.02.25 15:00

「アフリカ・スタートアップ」急成長の裏に、5年で8倍の投資マネー

ナイジェリア ラゴスの都市部/photo by Kehinde Temitope Odutayo shutterstock.com


アフリカへの注目度を急速に高める3つの要因


寺久保氏によると、これだけアフリカへの注目度が急速に高まっている要因として、(1)インターネット環境の変化、(2)グローバルなレイターステージの投資家の増加、(3)起業家人材の多様化の3つが挙げられるという。
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1:インターネット環境の変化


以下は、人口2億人超というアフリカ最大規模の人口をもつナイジェリアのモバイルインターネット利用率だ。

「2015年の時点では、約9.6%の人しかモバイルインターネットにアクセスすることはできませんでした。しかし、6年後の21年には、利用者は5倍の約47.9%まで増加し、22年はついに50%を超えると予測されています。原因としては、近年3000円〜1万円程度の安価な中国製スマートフォンが流通したことにより、それまで一部の都市部に住む高所得層しか利用していなかったスマートフォンが広く普及したことが考えられます。これはナイジェリアの事例ですが、アフリカ各国で同様にモバイルインターネット利用率は成長を遂げていて、今後もこの成長は加速する見込みです」と、寺久保氏はスタートアップ企業にとっての市場を大きく開放するキッカケとなったスマホの普及の経緯を語った。

インターネット利用率のグラフ
出典:Statista等をもとにUNCOVERED FUNDが作成
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2:グローバルなレイターステージの投資家の増加


アフリカスタートアップにとって昨年の大きな変化は、グローバルレベルのレイター投資家が参入したことだ。以下の2021年のアフリカスタートアップの大型ディール一覧が示すように、Softbank Vision Fundをはじめ、Tigar GlobalやSquire Capital、Foundes Fund等、世界のスタートアップ市場をリードする投資家がアフリカ投資に乗り出している。

実は、アフリカスタートアップは、ホールディングス法人を「アメリカに登記している」ケースが多く、事業を運営するアフリカ各国に子会社を作り運営している。

その理由は、当然カントリーリスクに対する対策という面もあるが、前述したJumiaの様に最終的にアメリカでのIPOを目指している事も関係している。2021年のアフリカスタートアップ投資のトップ20のディールへの投資は約60%がアメリカ投資家によるものだと言われている。このようなグローバルVCから投資を受けることは、戦略上、単に資金を得る以上の重要な意味があるのだ。

2021年のアフリカスタートアップの大型ディール一覧
アフリカの大型ディール一覧
出典:BriterBridge African Investment report等からUNCOVERED FUNDが作成。

それに加え、あまり知られてはいないが、デカコーン企業がアフリカスタートアップへの投資を積極的に行っている実態もあるという。

寺久保氏は「アメリカの決済プラットフォームStripeは、ナイジェリアの〈Paystack〉の買収やセネガルの〈Wave〉への出資等を通じてアフリカ市場への参入を計画しています。また、弊社支援先のケニアでトラック版Uberを運営する〈Amitruck〉はアメリカのデジタルフォワーダーのFlexportからの出資を受けています。その他にも、東南アジアのGojekがウガンダでタクシー配車を運営する〈Safeboda〉へ出資していたりと、テック業界のリーディング企業は自社の類似企業やシナジーが生める現地スタートアップへの出資や買収を通じてアフリカ市場への参入を進めています」と語った。

3:起業家人材の多様化 


これだけアフリカのエコシステムが大きく変化している根底には、スタートアップの中心的存在である起業家人材の多様化が影響していることも忘れてはならない。寺久保氏によると、現在のアフリカの起業家は主に3つの属性に分かれるという。

「1つ目は外国人起業家です。欧米や中国等を中心に、各国のグローバル企業で経験を積んだ人々がアフリカ市場で起業するケースです。アフリカ市場にチャレンジしている日本人起業家も複数存在しています。実際に昨年アフリカスタートアップで最も多くの資金調達を達成した〈Opay〉のファウンダーは中国人であり、前述したようにSoftBank Vision Fund 2がリード投資家として入りながら、Sequoia Capital Chinaをはじめとする多数の中国系VCや企業からの出資を受けています。他にも、アメリカ人起業家が率いる血液のドローン輸送を行う〈Zipline〉は、現在はアフリカで培った知見を活用してWalmartと提携し、アメリカ市場で商用ドローン輸送に参入しています。

2つ目はアフリカのローカル企業や大学出身の起業家です。アフリカ各国の大手企業や近年ユニコーン企業となったスタートアップで経験を積んだ人々が、起業家としてチャレンジする事例も増えています。例えば、弊社投資先の〈Treepz〉のファウンダーであるOnyeka氏も、前述したJumiaの創業時に最初の社員として加入し事業成長に大きく貢献した後に起業をしています。現在は、ナイジェリア、ガーナ、ウガンダを拠点に公共交通のないアフリカでのバス交通の利便性を高めるべく、配車プラットフォームの運営を行っています。
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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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