声優・花江夏樹、大事なときほど「つくらずに」勝負する


実は「声優になる」こと自体は、わりと簡単かもしれないと思っています。なぜなら、本当に大変なのは「なってから」だから。

もちろん、10年のキャリアでうまくいかない時期もありました。というか、「満足しない」というのはいつも感じていますね。限られた時間の中で思い通りにできなかったとしても、それがいまの自分の実力の限界なので。

ただ、正解がないのが本当に難しいところだなと思うんですけど、自分では「できなかった」と思っていても、周りから評価されている場合もあるのがこの世界。落ち込んでも大体寝たら直るし、あんまり引きずらないタイプです。

悩み事は誰かに相談に乗ってもらったりもせず、全部自分で解決することが多いですね。いまは移動時間とか寝る前も全部仕事のことを考えているので、マイナスな感情の消化はその時間でできているのかもしれません。

花江夏樹

技術はやっぱり「盗む」ことが多いですね。人から盗んで、自分なりのモノにしていくのが、大事だなと思っています。今はコロナ禍で他の声優の方と一緒に収録ができないことも多くて、盗める場が少ない。それが本当にストレスですね。

先輩から盗めるものってたくさんあるし、自分にないやり方をどんどん学べるので、そういった意味では、声優の世界はここ数年ちょっと時間がとまっているようにも感じてしまいます。

デビューから10年が経ちましたが、これからはもっと個性を出していけるような仕事もしていきたい。今までとはちょっと違ったポジションの役柄、例えば、先輩役だったり、悪役だったりにも挑戦していきたいです。

そういったキャラクターは、より「唯一無二なのか否か」が肝になってくると思うので、それに見合った技術も身に着けていけたらと思っています。

構成=松崎美和子、島田早紀 写真=小田駿一

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