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栗原菜緒(撮影=小田駿一)

上下関係、ジェンダー、社内外の枠組みなどに縛られずに、チームや組織、あるいは業界に多くの実りをもたらした女性たちは、何を考え、どう行動したのか。

Forbes JAPANでは、これまでの考え方や既存のシステムを超えて活躍する女性にフォーカスした企画「Beyond Systems」を始動。約3カ月にわたり、翻訳コンテンツを含めたインタビュー記事を連載していく。



「下着は胸だけでなく、その奥の心まで守ってくれるんです」。そう語るのは、女性の誇りや尊厳を考えるブランド「ナオランジェリー」を展開するfor Grace代表の栗原菜緒だ。2013年に起業し、新規参入が難しいと言われてきた下着業界で着実に存在感を高めている。

栗原はなぜ、下着を通じて女性の尊厳を訴えようとしているのか。栗原の原動力、そして女性に愛される商品を生み出し続ける秘訣とは──。

家には「女の子はいらない」空気があった


華やかで、チャーミング。栗原菜緒には「ランジェリーブランド経営者」という肩書きがよく似合う。

その明るさは生来のものかと思いきや、子ども時代は自分自身が女性であることに深く傷ついていたという。男性が重んじられる古風な家に生まれ、自尊心の低い幼少期を過ごした。

「家の中には『女の子はいらない』という空気がありました。兄と喧嘩すると私ばかり怒られましたし、ものがなくなると私が泥棒呼ばわりされることもあった。自分は存在しなくてもいいんだと強く感じていました。

一方で、兄はとても大切に扱われていました。親戚はいつも『お兄ちゃんはすごいよね』と言う。それを聞くうちに私自身も、『兄はすごくて自分はすごくない』という周囲の評価を受け入れてしまっていたんです」

塞ぎがちだった栗原を変えたのは、中学2年生のときに初めて身につけた一着のブラジャーだった。慣れない手つきでホックを留め、鏡の前で顔を上げると、そこに立っていたのは思いがけず「美しい」自分の姿だった。

「衝撃的な体験でした。下着姿のただ1人の女性として自分を見たときに、そんなに悪い存在じゃない……というか、すごい綺麗じゃん! と思えたんです。それから下着が大好きになって、女性であることを楽しんでもいいんだと思えるようになりました」

下着に対する愛が高じて、自分のランジェリーブランドを立ち上げたいと考えるのは、もう少し後のこと。高校時代は、「日本の地位をあげたい」という熱い想いを胸に外交官を志していた。しかし、大学在学中に外務省の国際法局で働き始めたことで、イメージとはかけ離れた官僚の仕事の現実を知った。

自分にこの仕事はできそうにない──。退職とともに失ったのは、仕事、収入、そしてずっと追い続けてきた夢だった。経験したことのない虚無感が、23歳の栗原を襲った。

「子どもの頃から常になりたいものがあって、ずっと夢を基準に生きてきました。それなのに、初めて夢がない状態になってしまった。周りの同級生はみんな大企業に勤めているのに、自分だけフリーター。その現実を前に、自己肯定感が一気に下がってしまいました」

打ちひしがれる栗原に、周囲の大人は「好きなことを仕事にしてみたら?」というアドバイスを送ったという。内容はありきたりだったかもしれない。でも、当時の栗原はそれを素直に実行してみようと思った。好きなものと聞かれて、真っ先に思いつくのは下着。それならまずは下着業界に入ってみようと、販売のアルバイトを始めた。

文=一本麻衣 編集=松崎美和子

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