つまり、同車の顧客がパワートレーンや航続距離よりも重要視するのは、室内の環境と乗り心地だね。e-C4の静粛性はトップクラスだし、シートのサポート性や座り心地はなかなか良い。インパネのど真ん中にモダンで大きな10インチのタッチスクリーンやメーターパネルがある。その中にバッテリー残量や運用モード、消費推移グラフなど、BEV特有の機能が表示される。
僕が気に入ったデザイン要素は、そのすぐ下の物理的なスイッチ類。やはり、エアコンなどのダイヤル式スイッチがあったほうが、僕みたいなアナログな人間には操作しやすいし、それらの触り心地がいい。さらにその下には携帯電話を充電できるスペースがあり、USBとUSB-Cのポートも備えている。最近のシトロエン車らしいスクエアなステアリングホイールもついて、ダッシュボードのデザインはシック。室内はグレー色で落ち着いている。
さあ、走りを見てみよう。外観上でBEVと分かるディテールは、マフラーが見当たらないこと、あとはロゴと充電ポートがあること。50kWhのリチウムイオンバッテリー容量の出力136psは、プジョーe2008と横並びで、「WLTPモードでの航続可能距離は約350km」とメーカー側はいうけど、リアルワールドでは、250から270kmといったところだろうか。チャージをしたい時は急速充電器なら、10%から80%までだとおよそ30分ぐらいかかる。200Vなら、7時間以上かかるだろう。
加速感は至って穏やかで品がある。これは急加速するようなBEVではない。例えば、運転席と助手席の間のカップホルダーにカップコーヒーを入れて、アクセルをバーンとベタ踏みしても、そのコーヒーはこぼれない。こういうところから上品な性格を伺える。急な加速ができないからこそ、小さめのバッテリーの残量は思うほど減らない。
ステアリングホイールは比較的小さいけど、操舵性はとても軽い。コーナーに入った時に、指一本だけでホイールを曲げることができるほど珍しく軽いステアリングフィールだけど、しっかりと路面からフィードバックしているところは嬉しい。また、BEVの柔らかい乗り心地は郊外路から高速道路へと速度域を上げると、これまでのどんなシトロエンよりも、静けさと滑らかさのマジックカーペット・ライドが始まる。とにかく静かで乗り心地がいい。
プジョー・シトロエン・DSは「パワー・オブ・チョイス」を掲げ、ICEでもPHEVでもBEVでも、乗り手にそれぞれの乗り方に合わせたパワートレインを選ばせるポリシーを持っている。このC4に関しては、上品で静かに街中を走ることが多いならe-C4、長距離を良く走るなら、C4ディーゼルを選ぶ方がいいだろう。
国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
「ライオンのひと吠え」
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