ビジネス

2022.02.11

頼まれごとを、「ノー」と言わずにうまく断わる言い方

ここ数年は、変化と混乱が絶えることなく続き、先も見通せず、ストレスと苦難に明け暮れる日々だった。過去に類を見ない、こんな時だからかもしれない。多くの人は、ひと呼吸置いて、「自分にとって大事なもの」を見定めようとしたようだ。

筆者の耳には、「これからはノーと言うべきだ」という声高な主張が数多く届いた。確かに、大事なことに集中しようとする姿勢はほめたたえたい。本質とは関係のない事柄を排除しよう、という意見には大賛成だ。何かを頼まれるたびに引き受けていたら、貴重な時間がどんどん減り、気が散ってばかりになる。

とはいえ、多くの人にとっては、何かを頼まれたときに「ノー」と言って断わるのは、想像以上に難しいものだ。米コーネル大学で組織行動学を研究するバネッサ・ボーンズ教授は、『Real Simple』誌の記事のなかでこう述べている。

「私たちには、他人とつながりたいという本能的な欲求がある。これは、生き残るために不可欠な欲求だ。何かを頼まれたときにノーと言って否定すると、つながりが断たれてしまうのではないかと不安になる」

困ったことに、「ノー」と言うと辛辣に聞こえてしまい、気まずい思いをする場合がある。これまで「ノー」と言ったことがないなら、なおさらだ。筆者もなかなか「ノー」と言えずに困っている。けれども、ノーと言わなければ、自分にとって何よりも大事な目標を達成できないこともわかっている。

そこで筆者は、ある作戦に出た。「ノー」よりもっと穏やかな響きがあるが、「ノー」と同じくらい毅然とした、別の言い方で断るようにしたのだ。

「今はできません(Not now)」


これを言い換えると、「いいアイデアかもしれないが、今はそのタイミングではない。もう少し時間が経てば、自分も興味を持ったり、価値を見いだせたりする可能性がある」となる。

この断わり方が適切かどうかは、以下のように自問自答すればわかる。

・依頼された仕事を見送った場合に、自分は何かを失うか。
・この仕事は、自分が現在手がけている他の仕事よりも重要度が高いか。
・この仕事を見送ったら、自分はどう感じるか。
・依頼を断わって機会を逃したら、自分はどう感じるか。

「自分には向いていません(Not me)」


答えが、完全な「ノー」ではなく、単に「自分には向いていない」場合もある。そんなときは、自分より適した人を見つけ、依頼された仕事を割り振らなくてはならない。

この断わり方が適切かどうかは、以下の点を考えてみればわかる。

・この仕事に適した人は誰か。
・この仕事をやり遂げる能力を持つ人は誰か。
・この仕事をやることでメリットが得られる人は誰か。
・決められた時間内にこの仕事を完了できる余裕のある人は誰か。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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