ビジネス

2022.02.08

投資側の視点で見る企業のサステナビリティ

SDG IMPACT JAPAN 代表取締役CEO 小木曽麻里


インパクト投資に影響力をもつのが、21年3月にEUで適用段階に入った先述のSFDRだ。ここで定義される商品分類「サステナビリティを促進する金融商品(第9条)」に該当することが、投資を集めるのに有利に働く。「ESG投資の8条はリスクとリターンの2軸なのに対し、より厳格な9条はリスク、リターンに加え、さらにインパクトの3軸で投資判断される。日本の9条投資額が非常に小さいのは、これまでソーシャルセクターと、メインストリームの金融の融合が図られてこなかったことの表れだ」と小木曽は見る。

米国はバイデン政権の脱炭素化政策の影響もあって、インパクト投資が欧州を上回る伸びを示している。英国の事例では、英金融大手系HSBCアセットマネジメントが10億ドル規模の「自然資本インパクト投資ファンド」運用を開始した。8%のリターンと同時に環境保全型農業や持続可能な森林経営の目標達成を目指すというものだ。創出されるインパクトは定量的に測定され、投資家に報告される。

ESG投資に比べてインパクト投資はインパクトが数値化されるために、投資家が投資先として選択しやすくなるという利点がある。

企業存続にかかわるという認識を


日本の運用投資額は18年の2兆1800億ドルから20年の2兆8790億ドルへと31.8%増加し、非常に好調だ。20年3月に機関投資家の行動規範を示した「スチュワードシップ・コード」の改訂、前出の「コーポレートガバナンス・コード」の一部改訂が行われ、ESG投資環境が整備されつつある。

しかし小木曽は、本当の改革はこれから訪れるという。「日本企業はESGを一時の流行という視点でとらえているところがまだあります。サステナビリティを前提としたうえでどう収益を生み、会社を存続させていくかが重要。サステナビリティは企業経営の前提として考えられるべきなのです」。

企業を取り巻く環境が急速に変化するなか、気候変動の危機に対応できない企業や社会にインパクトを生み出せない企業は、競争力を失う可能性が大きい。また、情報を開示しない企業も、もはや不利益を被るだけだ。

世界の潮流に乗り遅れて生存競争で負けないためにも、企業のパーパスを強固にすることから始める必要がある。


こぎそ・まり◎世界銀行、MIGAなどで世界の資本市場、投資分野に携わり、ファーストリテイリングのダイバーシティ担当部長など、DEI(多様性、平等性、インクルーシブ)領域も歴任。インパクト投資ファンドの設立、社会起業家支援などSDGビジネスに広く携わり、現在に至る。

文=中沢弘子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.087 2021年11月号(2021/9/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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