ビジネス

2022.02.08

投資側の視点で見る企業のサステナビリティ

SDG IMPACT JAPAN 代表取締役CEO 小木曽麻里


日本企業も世界水準の情報開示が必須


このようなESGウォッシュを阻止すべく、各国は規制へと乗り出している。EUは18年に打ち出した「持続可能な金融行動計画」のもと、ESGを定義する評価基準や規制の整備に着手。20年までに、世界に先駆けて3つの法規、「タクソノミー法(TR)」、「持続可能な金融開示規則(SFDR)」、「低炭素ベンチマーク規制(LCBR)」を制定した。サステナブルの定義や非財務情報の開示基準を明確化したことによって、ESGと非ESGのすみ分けが進み、グリーンウォッシュ対策にも一定の成果が見込まれる。

日本では、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言やオランダのNGOによる「GRI(Global Reporting Initiative)スタンダード」の情報開示の枠組みが普及している。情報開示はあくまでも自主性に任されるものの、企業がESG投資を集めるうえで絶対条件になる。各国が既存のフレームワークを基に情報開示を進めているのはそのためだ。

21年6月11日に東京証券取引所は「コーポレートガバナンス・コード(CG)」の改定を行い、施行した。気候変動などの地球環境問題への配慮やサステナビリティに関する取り組みについて、TCFDまたはそれと同等の国際的枠組みに基づく情報開示が明記されたかたちだ。しかし、現状はというと、小木曽は「日本企業は情報開示、非財務情報の情報開示が十分とは言えません。どのようにインパクトと収益双方の創出を達成していくかの道筋が示せていないので、投資も進みにくいというところがある」と厳しい見方を示した。

情報開示の内容いかんによっては、企業経営への影響もある。例えば、化石資源事業の転換や縮小の見通しが不透明な企業や、なかなか具体的な施策を示さない企業に対して、投資家はリスクととらえ、企業価値評価を下げる可能性が高い。

さらには対話を通じて改善策を一向に示さない投資先企業に対し、機関投資家が最終手段として、ポートフォリオから外す「ダイベストメント(投資撤退)」を行う動きも国内外で強まってきている。米非営利団体「DivestInvest」の20年調査によると、これまでにダイベストメント宣言した団体は1300以上、運用資産総額は約14兆ドルになる。

ESG投資も、社会・環境・経済の変化とともに進化していく。サステナブルな社会への変革にポジティブな影響を与え、金銭的な投資リターンも追求するインパクト投資は、国際金融公社(IFC)によると、20年度の市場規模は推定2.3兆ドル。ファンド数は前年比887から大きく増え、1000を超えた。「インパクト投資とは、ESGのスコアがいいだけでなく、成長過程で環境・社会的インパクトを生み出せる企業への投資のこと」と小木曽。
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文=中沢弘子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.087 2021年11月号(2021/9/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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