硬貨で目にする顔は、私たちが男女について、また自分自身についてどのように考えるかを実質的に左右する。社会心理学では、子ども(や大人)は「ジェンダースキーマ」と呼ばれる精神構造を持ち、これを使って周囲の情報をジェンダーのカテゴリーに応じて整理していると考えられている。
ジェンダースキーマは、自分のジェンダーにとって適切な振る舞いを見極める上で基準となる。子どもは、非常に幼いうちから周囲の情報を使いジェンダースキーマの形成を始める。硬貨からは、「リーダーは白人男性である」というメッセージを受け取り、男性に関するジェンダースキーマにリーダーシップが加わる。
子どもはこの情報を内面化し、学齢期になる頃には、将来の職業についての夢を考える上で、ジェンダーが最も強力な決定要素となる。女の子は、優雅さが必要なバレリーナなどのキャリアや、獣医や教師など人を助けるキャリアを目指すことが多い。
25セント硬貨の裏側に女性を載せることは素晴らしいスタートだが、より多くの変化が必要なのは明らかだ。タブマンが20ドル札の表面に現れる2030年の時点で、いまだに通貨を持ち歩く人がどれだけいるかは分からない。
バイデン大統領は数カ月前、男女平等達成に向けた米国初の国家戦略を発表。国内外で男女平等を達成するための複雑な目標を打ち出したが、貨幣の変更については一切言及がなかった。貨幣のデザインにおける不平等のような、非常にあからさまで毎日目にするジェンダーの偏見は見過ごされがちだ。残念ながら、こうした不平等を正すまでは、女性が男性と同じ位置に立つことはないだろう。