リサイクル率日本一の大崎町の取り組み
次に、大崎町役場住民環境課環境対策係 松元昭二さんから大崎町のリサイクル事業についての説明があった。
大崎町にはもともと焼却施設がなく、すべてのごみを埋立処分場へ持って来ていた。しかし、その埋立のキャパシティには限界があるため、埋立処分場を拡大する必要性が出てきたという。そうした状況の中で、当時「容器包装リサイクル法」が施行された。
世の中に「リサイクル」という言葉が見られ始めた時期と重なり、そこから大崎町はリサイクルに注力するようになったという。
松元:焼却炉を建設しようという意見も出ましたが、維持費が高く、次世代への大きな負担になってしまうので、他の方法を探りました。新たに埋立処分場を作るにしても、すべてのごみを埋め立てていたことから「カラスやハエなどが集まる迷惑施設」というイメージが強く、住民の皆さんの理解が得られない。そこで、ごみを分別し、リサイクルする取り組みを始めることになりました。
その後、住民や行政、企業が連携して「大崎リサイクルシステム」が構築されてきた。大崎町ではごみを27品目に分別するだけでなく、廃食油からディーゼルエンジンの軽油代替燃料(BDF)精製を試みたり、町内の家庭や事業所から出される生ごみ・草木から堆肥を作ったり、ごみを資源につなげる活動を積極的に行っている。
松元:大切なのは、住民によるごみの分別です。「大崎リサイクルシステム」は、実際に住民の皆さんが分別しないと成立しない仕組みなので、まずは住民の皆さんに埋立処分場の状況や行政の課題を共有しました。
実際に大崎町のリサイクル率は82.6%(2019年度)。これまで12年連続リサイクル率日本一に。そこには、「混ぜればごみ、分ければ資源」というポリシーがあるという。
リサイクルのメリットは、当初の目的だった埋立処分場の延命に加え、コスト削減がある。令和元年度における1人当たりのごみ処理にかかる経費は全国平均で16400円だが、大崎町では9400円。抑えられた分は福祉・教育分野などへ拠出される。
住民によって分別された資源ごみの一部は有料で売却され、大崎町ではそのお金を奨学金事業として住民に還元している。また、資源ごみの中間処理を行う「有限会社そおリサイクルセンター」が設立され、現在は約40名の従業員が働いている。このように、大崎リサイクルシステムによって雇用も創出されているのだ。
こうした動きに注目が集まり、海外から要請を受けて他の地域でリサイクルの取り組みを支援することもあるという。
実際に、現在大崎町はインドネシアの埋立処分場を支援した実績がある。大崎町と同じく、インドネシアにおいても焼却炉が少ないために、埋立処分場が逼迫している。これまで平成24〜26年度にかけて、インドネシアのデポック市に対して、生ごみの堆肥化技術を導入するなど支援を行っていた。またバリ州においても今後3年間支援することが決まっており、ジャカルタ州にリサイクル施設を作る予定だという。