ふるさと納税の2020年度の寄付総額は約6725億円で過去最高であり、寄付件数も過去最多を記録した。総務省の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う「巣ごもり需要」を背景に、各地の返礼品を楽しむ寄付者が増えたためとみられる。
こうしたふるさと納税をはじめとした新たな金銭の流れは、企業と行政の間でも活発化している。今回は、企業と行政によるサーキュラーエコノミーの実践をテーマに、ヤフーによる企業版ふるさと納税や、これまでリサイクル率12年連続日本一を獲得し、今回ヤフーの寄附先に選ばれた鹿児島県大崎町の取り組みを紹介したイベントの様子をお届けする。
大崎町はいかにしてリサイクルを通してサーキュラーエコノミーの実践へつなげていくのか。企業と行政の協働するポイントや、その具体的な取り組みについて説明があった。
■登壇者
ヤフー SR推進統括本部 長谷川琢也
大崎町役場住民環境課環境対策係 松元昭二
一般社団法人大崎町SDGs推進協議会 専務理事 齊藤智彦
■進行
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任助教 高木超
脱炭素社会に向けた企業版ふるさと納税
まずイベント冒頭では、ヤフー SR推進統括本部の長谷川琢也さんから、今回実施されたヤフーの企業版ふるさと納税や、脱炭素の取り組みについてお話があった。
長谷川:ヤフーでは、日本国内の脱炭素化の促進のため、脱炭素化を目指す地方公共団体に対して企業版ふるさと納税を活用した支援をすることで、2021年から「地域カーボンニュートラル促進プロジェクト」を実施しています。
脱炭素化を一つの企業でやれることには限界がある一方で、企業のリソースを使って脱炭素社会を広げていきたいという思いがあり、「企業版ふるさと納税」に着目し、この春から公募を開始しました。民間企業が再生可能エネルギーや脱炭素に特化して、公募形式で脱炭素の取り組みをするのは日本初です。
ヤフーでは「2023年度 100%再エネチャレンジ」を宣言し、2023年度までに事業活動で利用する電力の100%再生可能エネルギー化を実現しようとしています。
なぜヤフーが企業版ふるさと納税を実施するのかというと、2050年へ向けた国内の脱炭素化に貢献していきたいというのもありますし、SDGsの中でも特に17番の「パートナーシップで目標を達成しよう」を実現したいというのもあります。
実際に今回の企業版ふるさと納税の審査プロセスでは、「脱炭素に対する直接的なインパクトがあるか」「独自性・地域性があるか」「他の地域で展開可能なモデルとなりうるか」という点を重視しました。「脱炭素」と一言で言っても、この取り組みには様々なバリエーションがあります。具体的に、炭素の排出削減、炭素の吸収・固定、再エネ発電といったものがあり、そうした多様な取り組みから審査を行いました。
第一弾の寄付先は、北海道三笠市、宮城県、新潟県、埼玉県、神奈川県平塚市、山梨県、三重県尾鷲市、鹿児島県大崎町の8自治体。例えば、北海道三笠市のプロジェクトでは、閉山炭鉱の採掘跡にCO2を注入し固定させる技術が研究されており、これが実現すれば、石炭から水素を作成する過程で発生するCO2を固定でき、カーボンニュートラルな水素産出が可能になるという。
三重県尾鷲市は、尾鷲ヒノキ林業という江戸時代から続く伝統林業の森を守りながら、CO2吸収量が少なくなった樹齢の高い木の植え替えを定期的に行う。また、伐採した木の木質化を図るとともに、尾鷲市の森林のふもとにある九鬼湾で、藻場造成やブルーカーボンの取り組みを推進するという。
このように、脱炭素に向けた取り組みであると同時に、「リジェネレーション(再生)」につながる挑戦がされている。