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2022.01.26

こんなNFTアートがおもしろい。弁護士の私が昨年買ったものは?

エキソニモ「CONNECT THE RANDOM DOTS #17」(2021) 出典:OpenSea


デジタル作品の価値を問う試み


藤幡正樹「Brave New Commons」




藤幡正樹「tmp」(1989)作品番号:001
出典:Brave New Commons


藤幡正樹「xx」(1989)作品番号:019 
出典:Brave New Commons

2021年10月29日から31日に開催された3331 Art Fair 2021で公開されたメディアアーティストの藤幡正樹によるプロジェクト「Brave New Commons。藤幡が1980年代に作成した未発表デジタルデータ30作品を自身で発掘し、NFTアートとして販売するプロジェクトである。

ユニークなのは価格設定で、「Subdivision方式」と呼ばれ、最初に決められた作品価格を購入者の数で割って最終価格が決められる。つまり、購入者の数が多いほど作品の最終価格は下がることになる。

例えば、作品番号001「tmp」の価格は100万円で設定されたが、2022年1月18日時点で790人の申し込みが集まっている。そのため、その数と同じエディションが発行され、1エディションあたりの価格は1265円(790/100万円)になる。

NFTの仕組みは、複製可能なデジタルデータに唯一性(希少性)を与えていわば1点ものの絵画の売買のような既存のシステムに類似した設計を可能にすることにある。作品に希少性があるからこそ、その作品を欲しいと思う購入者が多くいればいるほど、アートの価格は上がっていく。

NFTアートでも期間を限定してオープンエディション(エディション数を限定しない方式)で販売することはあるが、このときでも1エディションの価格が設定されており、それぞれの購入者が見ている価格は当然ながら同じである。

これに対して、この「Subdivision方式」では購入者が見ている価格が購入申し込み順によってそれぞれ異なる点が特徴的だ。つまり、「tmp」の購入を最初に申し込んだ人は100万円の価格として「tmp」を見ている。そして、2番目に申し込んだ人は「tmp」を50万円の価格として見ることになる。さらに、3番目に申し込んだ人は33万3333円……という具合だ。

筆者は「tmp」(作品番号001)は414番目(2415円のとき)に、「xx」(作品番号019)は最初(50万円のとき)に購入申し込みをしている。

従来の考え方からすれば、多くのエディションが発行される「tmp」の価値は最終的な販売価格のとおりに分散されるようにも思えるが、ファーストエディションが特に高額で取引されることも起こるかもしれない。今後のマーケットでの作品流通も含めて興味深いプロジェクトだ。

この「Brave New Commons」は、2022年1月31日までウェブサイトで購入申込みができる。デジタル作品の価値は既存のシステムと同じように決まるのか。それとも「Subdivision方式」に基づきより多くの人が保有することで新たな価値が生まれるのか。デジタル作品の価値をテーマとする「Brave New Commons」は、NFTアートの初購入に最適ではないだろうか。

今後も、単に作品をデジタル化するだけのNFTアートではなく、NFTの表現手段としての特性やNFT/ブロックチェーンを活かすコンセプトを考えたプロジェクトはどんどん生まれてくるだろう。

今年もどのような作品が生まれるのか楽しみだ。

文=木村剛大

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