アカデミー賞への期待も高まる 「ドライブ・マイ・カー」濱口竜介監督の歩み

濱口竜介監督(写真=Hinata Ishizawa)


「偶然と想像」がベルリン映画祭で銀熊賞


昨年3月、コロナ禍で閉塞感が漂っていた日本の映画界に朗報が届いた。濱口監督の映画「偶然と想像」が、第71回ベルリン国際映画祭の審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞したのだ。

>>是枝監督に続くか? 濱口竜介「偶然と想像」がベルリン映画祭で銀熊賞

ベルリン国際映画祭は、カンヌ国際映画祭とヴェネツィア国際映画祭に並ぶ世界三大映画祭の1つ。現在、「ドライブ・マイ・カー」がアメリカの映画賞を席巻しているが、ほぼ同時期に撮影された「偶然と想像」がヨーロッパの映画賞で評価されたことは、大きな意味を持つ。

昨年6月に行われた第71回ベルリン国際映画祭の授賞式にも濱口監督は出席。Forbes JAPAN Webは直後にインタビューを行った。

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写真=Hinata Ishizawa

>>【独占】銀熊賞受賞『偶然と想像』濱口監督が語った、ベルリン映画祭の知性

濱口監督は、3つの短編からなるオムニバス作品の受賞には「まさかという驚きの気持ちでした。コンペに選出された時点で、十分に満足するところもあったので。国際映画祭というのは、枠にとらわれずに評価するというのが1つの役割であることはもちろんですけど、正直なところ予想していませんでした」と語った。

村上春樹原作「ドライブ・マイ・カー」が話題に


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(c)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

「ドライブ・マイ・カー」の公開は昨年7月だったが、一部の映画館では現在でもロングランで上映されている。第74回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門では脚本賞を受賞(共同脚本の大江崇允とともに)した。

>>村上春樹の小説が原作。映画「ドライブ・マイ・カー」が描く不信のとき

村上春樹の3つの短編小説が原作。人間の心理の襞まで丹念に描いていく濱口の作品は、村上文学との相性もよく、3時間にも及ぶ作品だが完成度はかなり高い。前述のアメリカにおける快進撃もうなずける。

最新作は、原点回帰のオムニバス「偶然と想像」


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(c)2021 NEOPA fictive

昨年12月に公開された「偶然と想像」は、「ドライブ・マイ・カー」の撮影とほぼ同時期に並行するかたちで製作された作品。並行してこれだけのクオリティの作品を仕上げるところに、濱口監督の並々ならぬ力量を感じる。

>>「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督。最新作「偶然と想像」は原点回帰

3つの短篇から成るオムニバス作品で、脚本も濱口監督が自ら執筆。それぞれ35分、44分、39分の3つの物語に、「魔法(よりもっと不確か)」「扉は開けたままで」「もう一度」というタイトルが付けられており、いずれも偶然や想像が引き起こす人々の日常の変化を鮮やかに描いている。「ドライブ・マイ・カー」と並んで、アメリカでも評価が高い作品だ。

濱口監督の作品は、これまでヨーロッパの映画賞では軒並み高い評価を得てきたが、「ドライブ・マイ・カー」で、アメリカでの評価も高まっており、国内でも「世界のハマグチ」という称号も聞こえてくる。

第94回アカデミー賞の授賞式は3月27日(現地時間)。冬季オリンピックやスーパーボウルとの兼ね合いで1カ月先延ばしとなったが、桜が咲く頃に濱口監督の笑顔が見られるかもしれない。

文=Forbes JAPAN編集部

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