鈴木:先日はグラスゴーで開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)にも参加しましたが、環境に対する取り組みについての世界的な流れを感じましたか。
園田:インパクトが大きかったのは、やはり新型コロナウイルスのパンデミックではないでしょうか。テクノロジー的には以前からリモートワークは可能だったわけですが、コロナ禍によって大きく変わり、テクノロジーの浸透が世界的に進みました。移動には非常に大きなCO2を使いますので、「ムリ・ムダ」をなくすことは非常に重要です。そうしたことも意識が変わって実現しやすくなったと思います。
地球温暖化の問題が待ったなしの状況にある一方で、問題を解決できるかもしれないと考えているコミュニティも存在する。だからこそ、COP26はパリのときと比べてずいぶん注目を集めましたし、局面が変わったと思います。
今年のCOP26に参加した園田。
鈴木:私も投資家として、COP26には行くべきだったという思いがあります。今回は、ベンチャーキャピタル(VC)があまり参加していなかったことが少し話題になっていました。
VCは次世代のテクノロジーを支援していく重要な役割を担っていますが、特にカーボンニュートラルは、新しいテクノロジーなしでは達成できない目標です。21年はクライメートテック(気候変動テック)関連の企業が200億ドル(約2兆2600億円)以上の資金を集め、前年から倍以上に増えましたが、それでもまだ少ないです。特に日本には、クライメートテックファンドがほぼ存在しません。
ただほかの海外の状況をみても、欧州は進んでいますが、アメリカのVCは後追いをしているだけです。クライメートテックやサステナビリティに関するソリューションの分野でグローバルのナンバーワンになるのは、アメリカ企業ではない可能性があるので、日本にもチャンスがあります。
スマートシティプラットフォーマーの世界一に
園田:私は、スマートシティを展開する地域として、中東が面白いと考えています。サウジアラビアの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」が主催する「未来投資イニシアチブ(FII)」に毎年参加していますが、世界中のベンチャーや投資家、各国の首脳、社会活動されてる方が一堂に会して、オープンイノベーションについてディスカッションしています。サウジアラビアではスマートシティなどを推進する巨大プロジェクト「NEOM」が進められていますし、非常に活気があります。
サウジアラビアは石油のおかげで、世界で最も豊かな国のひとつになりましたが、一方で石油産業にいつまでも依存するわけにいかないという意識を皆さんが強くおもちです。しかも若い世代にその意識が強く、いままでの伝統を維持しながらどうやって社会変革を起こし、新しい産業をつくっていくかを皇太子がイニシアチブをとって取り組んでおられます。
私たちが和歌山などできめ細かく提供しているシステムを大きなスケールで実現できるフィールドが、サウジアラビアにはあるのです。
未来投資イニシアチブ(FII)の会場の様子