顧客の間でがんを引き起こす可能性があるたばこ会社に勤めていようが、有害だと判明した化学製品を販売していようが、米国外で働く人に奴隷労働並みの賃金を支払っていようが、あまり気にしていなかったのだ。こうした世代は仕事とキャリアを持つことを望み、内在的な道徳・倫理的影響については考えていなかった。
悪い人だったというわけではなく、当時の考え方は現在とは異なっていたのだ。20年以上その会社で働き退職金を手にして、上司から温かな握手を送られ、金時計を手にフロリダ州へと移住した時代だった。
それが今は全く違う。若いミレニアル世代やジェネレーションZ世代は、社会・政治的問題を非常に気にかけている。自分の価値観と同じ価値観を持ち、それを推進する企業で働くことを望んでいる。この集団は、人種の平等やトランスジェンダーの権利、環境保護を大事にしている。
こうした考え方が、若い世代が引かれる企業のタイプに影響を与えている。若い世代は、自分と同じ世界観を持つ場所を追求している。仕事の意義や目的、充足感が、この世代にとって最も重要なのだ。
例えば、現在は「メタ(Meta)」に改名したフェイスブックは、十分な数のソフトウエアエンジニアを採用することができないでいる。社内文書によると、メタバースの力は同社の2021年の採用目標を達成する上で十分ではない。(改名前の)フェイスブックはニーズを満たすため、欧州で約1万人のエンジニアを採用しなければならなかった。
最近行われた調査では、人々が給料や地位より「自分の価値観や倫理、道徳」を優先していることが示されている。人々は自分の良心に基づいて仕事を選ぶことで「態度を明確にしている」のだ。
職場について匿名で考えやコメントを共有できる労働者向けサイト「ブラインド(Blind)」上で10月最終週に行われた調査では、認証済み労働者の2284人が「今後絶対に働かないだろうと思う会社はありますか?」との問いに回答した。回答の選択肢は次の通りだ。
「道徳的な理由により、今後働かないだろうと考える会社がある」
「道徳的な理由からその会社で働くことは好まないだろうと思う会社はあるが、給料がよければ、あるいは状況(査証など)により必要な場合は働くだろう」
「ワークライフバランスと報酬がよい限り(働きたくない会社などは)ない。私がその仕事をしなければ誰かがやるだろう」