ビジネス

2021.12.15

和歌山からスコットランドまで。地域の課題をテクノロジーで解決するウフルのグローバル戦略

左:ウフル顧問 鈴木絵里子 右:ウフル代表取締役社長 CEO 園田崇史


園田:私たちがフラッグシップ的にやっているプロジェクトに、スマートシティがあります。政府が2021年8月に選定したスマートシティ関連事業の62地域のうち、4地域は私たちが主体的に関わっています。そのひとつである和歌山県すさみ町では、町長のリーダーシップのもと、既存の考え方を打破し、データやテクノロジーを取り入れることでコミュニティや街を持続可能なものにしようと試みています。

例えばすさみの道の駅は、平時は観光スポットですが、いざというときに避難所として活用されます。避難所にいろいろな方が来たときにどれくらい密になっているかをセンサーで把握したり、河川の状況をセンサーで把握したりといったことに取り組んでいます。いろいろなセンサーを組み合わせることで、より深いデータが取得でき、それによってさまざまな課題を解決できるのです。

すさみ町には、当社の研究開発責任者が移住しています。東京にいたら、現地の課題や状況を肌で感じることができません。私たちがスマートシティに取り組む際は、なるべく現地に足を運ぶようにしています。


和歌山県西牟婁郡すさみ町


観光・災害ポータル画像イメージ

和歌山県に関して言えば、先日、和歌山市内を流れる紀の川の橋が崩落し、約6万戸が断水しました。各エリアに給水車が派遣されましたが、行政からの依頼を受け、混雑状況や給水状況がわかる和歌山市内給水所マップを2日間で提供しました。

大変な作業ではありましたが、当社の位置情報を活用したバックエンドシステムをベースに、これまでスマートシティ/スーパーシティの活動の中で開発したデータ連携基盤の一部機能を活用することで実現し、3万人もの方にご利用いただきました。利用したのはわずかな期間でしたが、少しでも住民の方や行政の方のストレスを解消できてよかったです。

サステナビリティ分野では日本企業にもチャンスが


鈴木:ウフルは日本国内に止まらず、早くから海外を志向してきましたよね。

園田:はい、2018年にロンドンに子会社を設立しています。21年11月には、欧州における海面養殖データ事業のパイロットプロジェクトを開始したというプレスリリースを発表しました。

具体的には、スコットランドでサーモンの海面養殖を支援する事業をオランダ照明大手のシグニファイなどと開始しています。水のコンディションをセンサーでモニタリングし、人的負荷を減らしながら餌の量を最適化し、水質をきれいに保つプロジェクトです。CO2排出の観点からいうと、養殖でいちばん排出量が多いのは餌です。餌を生産する過程でも相当量のCO2を排出しますし、餌をあげすぎることで水が汚れます。餌の最適化は非常に重要なテーマです。


ウフルがIoTで効率化を目指す海面養殖施設(英北部スコットランド)
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Text by Fumihiko Ohashi / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro

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