ビジネス

2021.12.06 12:00

2021年、「ギアチェンジ」した日本のスタートアップの進化


成功企業が生んだ「好循環と新競争」

━━ DCM Ventures・プリンシパル 原 健一郎
advertisement

メルカリ、ラクスル、Sansan、freee、マネーフォワードといった、2014年、15年当時に、大型調達した企業が、期待通り上場し、大きな成長を続けている。こうした、いい成功事例が出たのが、この5年だ。この「成功事例の可視化」は、スタートアップ側、投資家側の双方にインパクトを与えた。

スタートアップ側への好影響は、成功例の知見の蓄積と、起業家、経営陣をはじめとした人材の層が厚くなった点だ。また、投資家側の事例でみても、我々のファンドは米国拠点で、米国を中心に資金調達をしているが、目に見える形で「日本がいい市場だ」とわかってもらうために成功事例があることが重要である。いまの東証一部市場やマザーズ市場での、前述企業の時価総額を見てもその結果は明らかだろう。

21年の象徴的な事象は、大きく2つだ。ひとつは、レイターステージの海外投資家の参入だ。我々の投資先も、キャディをはじめ数社が海外投資家から調達した。キャディに投資をしたDST Globalは、(フェイスブックやツイッター、AirBnB、Spotifyなどに投資をし)世界的にネームバリューがあり、影響力のあるファンドが日本への関心を持っている。さらに、タイガー・グローバル・マネジメント「系」の投資会社も日本に注目しているという話も聞く。これらも「成功事例の可視化」が後押ししたといえる好循環の現れだ。
advertisement

もうひとつは、スタートアップ側の競争環境の激化だ。従来、スタートアップの競合相手は同じくスタートアップだった。その変化が明らかになったのが、今年だ。具体的な事例のひとつは、ラクスルが提供開始した、企業のITインフラを管理する情報システム部門向けの統合クラウドサービスや、マネーフォワードがはじめた社内SaaS管理プラットフォームだ。14年、15年の成功事例の企業の新プロダクトがスタートアップと競合し始めている。

なぜ、こうした事例が大きな意味を持つのかーー。freee、マネーフォワード、ラクスルといった企業は上場後に数百億円の資金調達を行うなど資金量が多い。また、どのスタートアップよりもエンジニアの数が多く、質も高い。そしてどのスタートアップよりも大きな営業チームが社内にいる。スタートアップのような機動力と意思決定の速さを持ち、エンジニア、営業力、資金もある企業が、スタートアップの競合としては強敵が出てきたからだ。こうした直近で大成功したメガベンチャーが、スタートアップの競合になるケースはいままで少なかった。特にB2B SaaS領域での競争が顕著になってきている。これも、成功事例が増えた結果であり、今後もこうしたスタートアップの「新競争」は増えていくだろう。(談)

※※※
本連載は、発売中のForbes JAPAN2022年1月号特集「起業家ランキング2022」と連動した企画です。今後、著名投資家へのインタビューを連載形式で随時公開を予定しています。

Forbes JAPAN編集部=文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事