「高木新平」の強みと、影響されたこと
彼のすごいところの1つは、過去に自ら培ってきたものを、必要があれば迷いなくゼロにできるところ。そこはものすごく尊敬しています。
たとえば最近彼は、お酒をやめたんです。いままで、夜の集まりを重要な「装置」の1つとしてコミュニティ形成してきた人がお酒をやめるって、実はすごく大きなことなんですよね。でも私が、「夜にまとまらない話はきっと昼にもまとまらないよ」って言ったら、じゃあどうやって昼間に、「愛されながら話をまとめる」ことができるか考えて実行してた。
実は私は、1人目の子が生まれて育児を始めたころ、ある方から新規事業の立ち上げに携わってほしいといわれて、引き受けていたんです。でも両立は思った以上に大変で、しかもクオリティは譲りたくないから、いろいろと育児にしわ寄せも生じた。
そんなときに夫から言われたんです。「とことん育児をやりたいなら、いったんキャリアは脇に置いちゃえばいいんじゃない? 積み上げたキャリアがあると思うと、その既得の経験や財産を使ってなんとか辻褄を合わせようとしてしまう。結果、おかしくなることもあるんじゃないか。点と点はつながるんだから、心の声に従って別のことをしたらいいんだよ」って。
その言葉にハッとさせられて、仕事を辞めて「24時間子育て」のキャリアを選びました。そうしたら子育てには、「ダーウィン進化論の事例ドキュメンタリー」を作っているような絶対的クリエイティビティと興奮があった。私の場合は、リセットして正解だったと思います。
夫からは、子育てがひと段落したら思いっきり仕事をしなよと言われているのですが、過去のキャリアや職種に縛られた考えはしないようにしています。むしろ夫がプロデュースしてくれた、「妻のパンチライン」から何かが広がっていきそうな気もしています。
「共同創業婚」には「動機」を共有する日常が必要
私が結婚するうえで重要だと思っていたことは、「相手が優しいこと」とかではなかったんです。まずは2人がそれぞれにどんな夢を持って、人としてそれぞれに何を実現したいかをわかりあっていること。そしてそのうえで、「2人で実現したいこと」、つまりビジョンを見つけていこうとする動機があること。でなければ、お互いの「犠牲」になるだけで終わってしまうリスクもあります。
だから私たちは「共同創業婚」、すなわち夫婦2人で「ビジョンそのものからつくり上げていく」結婚を選びました。ぶつかり合いもしながら、幾度となくトライアンドエラーしつつ、2人にとっての「大事なこと(ビジョン)」を形成していく。
歩み寄って互いにビジョンをすり合わせることは、女性がどんどん「自立」する社会となるうえで、これからますます大切になっていくんじゃないかなと思っています。
「夫婦は自立した他人同士である」という、「夫婦自立」という考え方があります。でも、決して「経済的な自立」が必須ではないと思うんです。たとえば選択的に専業主婦を選んでする方もいらっしゃいますし、趣味に専念される奥様もいらっしゃる、奥様を家庭内から支える旦那様もいるでしょう。家庭経営において勝ち負けはないし、いろいろな方法、さまざまな「自立のしかた」があっていいと思うんです。
ただ、自立「させられている」という状況であってはいけない。そこはすごく重要です。
自分たちの中にまず確固たる「動機」がそれぞれあって、それをちゃんと互いに共有して日常生活を送る。まずは自分を責めないし、相手も責めない。それが「夫婦自立」だと思うんです。
会社で役職レベルが高いからって、「家でも偉い」という保証はまったくない。働いてもらわないと暮らせないことは事実ですが、パンツも洗ってもらわないとやっぱり生活できませんからね。夫も、結婚前はパンツのたたみ方も知りませんでしたが、今では手際良くやってくれます。
『妻のパンチライン』(@wifeisking著、2021年11月、幻冬舎刊)