「斎藤さん」の人柄もだんだんわかってくる
とはいえ、家で家族に仕事の話をするのって、結構面倒ですよね。聞き手がまったく知らない登場人物をまず説明しなければならない、環境設定がなかなかやっかいです。
でも、面倒なのは意外と最初だけなんです。
私は、「その人はどんな人? どんなパーソナリティの人?」とよく質問します。どんな大きな仕事でも、結局「人」が動かしているので、興味があるし、うまくいくかどうかは関わっている人の性格が影響することも多いので。そして聞いていくと、たとえば「エンジニアの斎藤さん」の人柄やクセもだんだんわかってきます。
そうすると、いまやっているプロジェクトのことを聞かされたときに、「ちょっと待って、それ、斎藤さんにひと言シェアした?」などと突っ込める。外野なりの、もしかすると外野ならではのアンテナが立って、そういう気づきもできるんですよ。
ガムシャラに仕事している人って、「予算」とか「結果」重視になってしまって、チームの1人ひとりの動機づけをしようとまでは意外と考えない。それが原因で離れていってしまう人もいるかもしれない。せっかく彼が、何度も口説いて引っ張ってきた大切な仲間なのにです。
そんなふうに、私が家で彼から突っ込んだ仕事の話を聞き、それらの登場人物とも想像上で親しくなって、外野からの助言をしていたら、夫から、「会社に来て、みんなとリアルで一緒にご飯食べてくれない?」と言われるようになりました。
たとえば「子どもを産むタイミングがわからない」と悩んでいる女性スタッフに、私自身が「産みどき」をどう考えたのか話して参考にしてもらったりして。そういう機会は私としてもうれしいんです。
停滞した高木新平の「直し方」
彼が落ち込んでる姿はあまり見たことはありません。ただ、結婚後3年目くらいのときに、心配になったことがありました。会社も2年目になり、夫は会社を軌道にのせるべく、ガムシャラになっていて、その様子は家庭内でもSNSからも漂っていました。
なんとなく直感的に、「この人はこのままだと自分の会社の社畜になる」と思ったんです。つまり、アイデアが大事な仕事なだけに、うまくこなすことが最優先になって欲しくなかった。
ちょうど正月だったので、子どもを親に預けて2時間ほど去年の反省と今年の抱負について話し合いました。
その中で、「仕事とは関係のないことも発信してみたら?」と提案しました。内容は、今、子育てに奮闘してるならそのことでもいいし、と。どこかで誰かに読まれるものを書くことで、感じたことをもう一度意識できるきっかけになるんじゃないかと思って。
そこで、家庭のことを自分視点で書くようになって、子どもたちや私とのやりとりも出ていきました。そしたら、仕事の広報的なことよりも家庭でのことの方が反響が大きくて。「他の家庭はどうしてるか、じつはみんな知りたいけど、案外知らないんだ」と彼自身も発見したようでした。
それが結果的に、「妻のパンチライン」につながっていったんです。だから私は、「こんなの作って……」って文句を言えないんです。
逆に、これまでいちばんうれしそうな夫を見たのは、やっぱり子どもが生まれたときですね。3人子どもがいるのですが、3回とも、「チームが増えた!」っていう感じでとにかく大喜びでした。
「仕事とは関係のないことも発信してみたら?」という妻の提案から生まれた、新しい発見