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2021.12.03

夫婦でビジョンを作る「共同創業婚」のススメ|イノベーターの妻たち

高木新平氏との出会いは、2014年の東京都知事選時、家入一真氏の選挙事務所でだった(連載「イノベーターの妻たち」 サムネイルデザイン=長谷川亮輔)


起業に際してはもちろん色んな先輩や取引先の候補の方たちとたくさん会っていた。夫はプレゼン練習とかはしないんですよ。この人にはなぜこの提案なのかをイメージはしていた様子でしたが、ジャズのセッションのようにその場の空気も楽しんでいる様子でした。

その当時、「家族へのプレゼン」としては、日常的に起業の中間・進捗報告は受けていました。会社が生まれようとするタイミングでちょうど、子どもも産まれる時期でしたから、私からも「こっちは20週で順調な感じだけど、そっちはどんな状況?」みたいな感じでやりとりしていました。

ただ彼は若かったし、貯蓄があるわけではなかったので、「稼がないと」というプレッシャーもあったと思います。私は、直接的に動けるわけではないけど、なるべく彼の話を聞いて、何か気がついたことがあったら意見しよう、という構えはありました。

夫の起業は、今までの実績で得た信頼やご縁で仕事の芽が生まれて、ちょっとずつ階段を上がっていった。

いまより規模の小さい会社だったときから、まあまあ大きな岐路には頻繁に立たされてきたわけです。そうなると、やはり経営者というのは孤独なので、ただただ私に話すことで思考の整理ができたようでした。今の支え合うかたちの基礎になっているかなと思います。

家でも夫とビジネス用語で話す


私は、出会ってすぐ妊娠してまもなく育児にどっぷりの生活に入ったので、夫から仕事の話を聞けることが唯一の社会への扉でもあり、夫の挑戦を聞くのが何より楽しかった。だから、私からも「今どんなことで悩んでるの?」と聞いたし、夫もなんでも話してくれた。

夫婦には共通言語が多い方が互いにストレスがないんです。だから私は、妻であるときにもあえてビジネス用語を使って話すようにしています。“家にいる妻”だと「帰ってきた夫が話を聞いてくれない」と思いがちだし、私もそうでしたが、重なり合いを見つけてにじり寄っていく方が平和だし、家庭経営的にプラスだと気づいたんですよね。

じつは「私に説明できるくらいの仕事じゃないなら、それは上手くいかないよね?」とも思っていたので、説明を聞いてわからないときは、「わかんない」と遠慮なく夫の話に突っ込んでいました。「どこがわかんなかった?」って彼から逆に聞かれたら、「具体的にはこういうところ」と説明し返すようにして。

高木新平はアイデアマンといわれていますし、本当にそうだと思いますが、私の「普通の人代表」みたいな反応も彼には刺激になるようです。「そうか、仕掛け人じゃない立場だと、そこにひっかかるんだ」と、私の反応も発想の元になったみたいです。だから、企画が生まれる瞬間、いわゆる彼のアイデアが降ってくる瞬間に立ち会うことも何度もありました。

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「妻のパンチライン」もまた、妻の発したある提案から生まれた──
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文=石井節子 写真=曽川拓哉

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