シリーズBラウンドで驚異の大型調達、大幅な受注拡大、社員数の急増と勢いづく同社が描く「製造業の可能性」の解放とは何か。
国内スタートアップによる資金調達の大型化が進むなか、2021年に業界を沸かせたのが加藤勇志郎が率いるキャディだ。同社は8月、国内外の投資家から総額80.3億円の資金調達を実施。設立4年、シリーズBとしては異例の大型案件となった。
見逃せないポイントは、海外の著名VCであるDST Globalのパートナー陣が出資していることだ。ロシア生まれの「ビリオネア製造機」ことユーリ・ミルナーが創業した同VCは、リーマン・ショック直後の09年にFacebook(現・Meta)に出資しIPOに導いた功績で知られ、そのほかにもTwitter、Airbnb、Spotify、Alibabaなど世界の名だたるメガベンチャーへの投資実績をもつ。
ここ1〜2年で、国内のスタートアップに投資する海外投資家は徐々に増えているが、そのほとんどはIPOを射程圏内に入れたレイターステージ。今回のキャディはシリーズBラウンドでそれだけ大きなポテンシャルを感じていることになる。
海外投資家からの評価について、「デジタル化が進んでいない大きな市場があることと、これまでの実績、そして経営陣を含むメンバーに魅力を感じてくれています」と加藤は話す。「ただ、大規模な調達をしたからといって、何か大きな変化があるわけではないですね。もともと考えていたことを、いかにより早くブーストしていくか、より強固にしていくかがとにかく課題。そのためには、それができる人を採用していくことです」。
キャディが掲げるミッションは、「製造業のポテンシャル解放」だ。国内に約120兆円の市場規模がある調達領域にフォーカスし、受発注プラットフォーム「CADDi」を展開。板金・機械加工や加工部品の一括受注サービスを手がける。
無から事業を立ち上げる「0→1」から、種を芽にして育てる「1→10」へと4年の短期間でフェーズを移行してきた。21年4〜6月期は受注高が前年同期比で約6倍に急拡大。設備面でも、加工部品を検査・梱包して発送までを担う品質管理センターの面積を関東で約3倍にするなど、アップテンポで成長している。
ただ、華麗な成長ぶりとは裏腹に、「まだまだ、常に課題だらけ。順調だと思ったことは一度もない」と加藤は屈託なく、淡々と話す。特に意識しているのが、採用と組織体制の強化だ。キャディの社員数は230人と、過去1年で3倍近くに急拡大。今後もエンジニアを現在の4倍に増やすことを計画している。