グーグルの「PageRank」は、アプリではなくウェブページ向けに設計されたアルゴリズムだ。同社は、最も適合性の高いソースや、最も引用されたページを見つけることで、他の検索エンジンを打ち負かしてきた。PageRankに加え、広告システムと自社製のITインフラによって、グーグルは大きな経済的成功を収め、検索エンジンの品質を高めるために莫大なリソースを投入してきた。
しかし、検索の品質を高めることに執着し過ぎたことで、グーグルは大きな戦略的過ちを犯してしまう。2010年頃にフェイスブックの普及によって、多くのユーザーがソーシャルネットワークから自分に合った情報を探すようになった。その結果、「グーグルにはソーシャルな側面が欠けている」という認識が広まり、グーグル検索の利用が減少した。グーグルは、この状況を打開するために、2011年に「Google+」をローンチした。
だが、AIの導入によってGoogle+は終焉を迎える。ディープラーニングや自然言語処理(NLP)の導入により、グーグルはソーシャルネットワークの力を借りることなく、検索市場での独占的地位をさらに強固なものにした。同社は、2015年に「ランクブレイン」(RankBrain)という、検索クエリと関連性のある言葉やフレーズを検索するアルゴリズムを導入した。
DuckDuckGoの検索クエリも急増中
また、その4年後には、「BERT」という、検索ワード同士の文脈関係を理解する言語モデルを導入した。グーグルの研究者らは、今年6月に公表した論文の中で、次世代のBERTを用いて検索クエリに直接答える可能性があることを示唆した。
豊富な資金力を武器にイノベーションを続ける独占企業に戦いを挑むのは容易なことではない。また、消費者は個人データの搾取に抗議しながらも、プライバシーを犠牲にして利便性を求めることに慣れている。こうした習慣を変えることも、新規参入者にとっては障壁になるだろう。
それでも、you.comは最適な時期にローンチされたと言える。規制の圧力は強まっており、企業や消費者によるグーグルへの抵抗も高まっている。ユーザーのプライバシーを完全に保護する検索エンジン「DuckDuckGo」の検索クエリ数は、2017年の59億クエリから2020年には236億クエリに急増している。
グローバル経済のオンライン化が進展する中、「検索のトップページに掲載されるために、世界中がグーグルに税金を払わなければならなくなる」とSocherは警鐘を鳴らす。インターネットユーザーの多くがプライバシーを守る検索エンジンを優先的に利用し、you.comの斬新なデザインを受け入れれば、同社はグーグルの牙城を崩すことに成功するかもしれない。