サムスンは、2013年に初めて折りたたみ式スマホのコンセプトモデル「Youm」を発表したが、その紹介動画は安っぽく、一部のマニアをターゲットにした製品という印象を与えた。
しかし、今年リリースされた「Flip 3」 と「Fold 3」は、いずれも期待を上回る売れ行きを見せている。「米国では、ローンチ後1カ月の販売台数が、過去2年間で販売した折りたたみ式端末の台数を上回った。具体的には、Galaxy Z Fold3がGalaxy Z Fold2の5倍、Galaxy Z Flip3がGalaxy Z Flip 5Gの40倍売れた」と同社は述べている。
サムスンは具体的な数字を公開しておらず、折りたたみ式でないモデルにはまだ遠く及ばない量だと思われるが、それでも折りたたみ式端末に対する関心が高まっていることは確かだ。
Fold 3とFlip 3の売れ行きの差から、折りたたみ式端末の方向性が見えてくる。Fold 3はマルチタスクが可能な大画面端末だが、実用性ではFlip 3の方が上だ。クラムシェル型のFlipは、折りたたむと従来端末の半分の大きさになる。スマホをポケットなど小さなスペースに収納したいユーザーにとって、これは非常に魅力的だ。また、開いたときの形状が従来端末とほとんど変わらないため、折りたたみ式がはじめてのユーザーにとって抵抗感が少ないのも利点だ。
新製品が売れるためには、技術的な問題を解決すること以外にも、消費者に対する動機付けが必要だ。サムスンは販売実績を開示していないが、町を歩いているとFoldよりもFlipを目にする機会がはるかに多い。Flipはただの機能的なスマートフォンではなく、楽しさも提供してくれる。
ロンドンにある高級デパート「セルフリッジズ」のテック製品を扱う階には、6万ポンド(約940万円)するEバイクや特注のアーケードゲームなどに混ざってサムスンの折りたたみ式スマホが陳列されているが、その前には多くの客が列をなし、手に取るのを楽しみに待っている。FoldとFlipは、優れたスマホであると同時に、触って楽しめるガジェットなのだ。