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2021.11.12 08:00

日本のプロスポーツ史上初の「上場」で中城村から新たな地平を開く

琉球アスティーダはTリーグ初年度から参戦。1年目は最下位だったが、3年目の今年、リーグ初優勝を果たす。チームには福原愛の元夫・江宏傑も一時期所属し、プレイしていた。

市場から正当な評価を得ることで資金を集めていくという、新しい流れをプロスポーツに──。経営基盤を強化するために上場企業となった沖縄の卓球チームは、日本のスポーツビジネスの台風の目となるか。


今年3月、Tリーグに参加する男子プロ卓球チーム・琉球アスティーダの母体となる琉球アスティーダスポーツクラブは、東京証券取引所のプロ向け市場、東京プロマーケット(TPM)への上場を果たした。

日本のスポーツチームとしては初の快挙、それも創業から約3年でのスピード上場だ。同社を率いる早川周作は卓球もチーム経営の経験もまったくないズブの素人だが、スポーツビジネスに参入したのは、以前から疑問があったからだという。

「この国ではなぜ、スポーツの価値がこんなにも低いのか?」

早川の前人生は壮絶だ。東京の夜学で法律を学び、28歳で社会構造を変えるため鳥取から衆議院選挙に出馬したが落選。東京で再起を図り、IPOアドバイザーとしての地位を確立していく。2011年、東日本大震災後に沖縄へ移住し、レストラン事業などを展開して軌道に乗ったころだった。Tリーグ前チェアマンの松下浩二に、沖縄に新しくできるプロ卓球チームのオーナーにならないかと打診される。


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資本金100万円からスタートし、今年3月30日に東京プロマーケットに上場。早川が東京証券取引所で上場の鐘を鳴らした。上場時株価により時価総額は約10億円に。

「卓球は、5歳で始めて15歳で五輪のメダルを取れる可能性がある。貧富の格差が拡大する沖縄で、お金をかけずしてこれほどのチャンスが得られる競技なんて、卓球以外にあるか?」

この言葉を聞いた早川は、30分で新チームを引き受けた。

スポーツにお金を出さない日本人


英国では法人の20%がスポーツに出資しているが、日本は5%程度といわれる。夢と感動を与えるスポーツに、なぜ日本人はこんなにもお金を出さないのか。

沖縄でも、お金の循環が必要なスポーツ分野には地元企業が支援をして回していくべきだと早川は訴えるが、実際はそうなっていない。一方で、投資を受けるスポーツ界にも課題があると指摘する。

一、ガバナンスが利いていない。
一、情報公開がされていない。
一、上場会社がいまだ1社もない。

上場している会社がない=スポーツはもうからない─少なくとも東京証券取引所や監査法人からはそう見えている、と感じていた。こうした課題を克服するためにも、卓球チームの上場を決意したと早川は言う。

「スポンサーではなく株主から支える、新しいスポーツチームのあり方をつくっていきたいんです」

上場後の戦略も明確だ。来年4月の市場再編で誕生するグロース市場(現マザーズ)と、福岡証券取引企業の新興市場「Q-Board」への同時上場に向けて、準備を進めている。その先に見据えているのは世界だ。
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文=上野直彦 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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