北野自身も5歳で原因不明の難病を発症し、長い療養生活を送った。走るのが得意な活発な子どもだったが、周期的な激しい痛みと長引く入院で最初に諦めたのがスポーツだった。高校生のとき、長期治療の子どもや家族に社会的、心理的支援を行う米国専門資格「チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)」を知り、憧れるようになったが、病気を抱えて留学できると思えなかった。
18歳で治療法が見つかり、大学、大学院に進学し、憧れのCLS取得のため米国へ留学。教授の勧めでパラリンピックの関連団体でインターンをしたことがきっかけで、「スポーツの力」に気がついた。
帰国後、プロや大学のスポーツチーム、アスリートと協力して、入院中の子どもたちにスポーツ活動を提供する活動を開始。団体を設立し、長期療養児がスポーツチームに入団するプログラムなどもつくった。これまでに13以上の施設で、1000人以上の子どもが参加した。
スポーツの力とは何か。北野はこう話す。「入団プログラムに参加した子は、『諦めないこと、真剣にいま一生懸命やることを学んだ。自分の闘病への勇気をもらった』と言っていました。長引く治療のなかで『これはできない』と自分の可能性に線を引いてしまいがちです。そういった線を取っ払って、前向きに生きる自信をつけてくれます」。
もう一つの欠かせない魅力は、仲間ができることだ。「長引く治療生活を支えてくれるロールモデルや仲間ができれば、可能性や選択肢はもっと広がる。自分にはなかった彼らの10年後、20年後の可能性にワクワクしています」。
きたの・はなこ◎1987年、兵庫県生まれ。幼少期から原因不明の病で15年間長期療養生活を送る。慶應義塾大学卒、京都大学大学院修了。米国留学し、チャイルド・ライフ・スペシャリストの資格を取得。帰国後、資格を生かして小児病院で勤務したのち、団体を設立。